大阪地裁堺支部が、詐欺事件で送検された容疑者の男の収容場所を警察署の留置場から拘置所に変える決定を出していたことが2日、分かった。警察官の取り調べで暴言を吐かれたとして弁護人が移送を求め、裁判所は録音・録画(可視化)がされていないことを理由に認めた。
警察が逮捕し検察に送致した容疑者を法務省所管の拘置所ではなく、留置場に収容し続ける制度は「代用監獄」と呼ばれる。日弁連は「自白強要の温床」と批判してきたが、大半の事件で裁判所に認められるのが実情で、拘置所に移送する決定は異例だ。
男(21)=堺支部で公判中=は、昨年10月に80代女性から社債購入名目で1118万円をだまし取ったとして、同年12月3日に大阪府警南堺署に詐欺容疑で逮捕された。送検後の同5日、堺簡裁は同署を勾留場所として決定した。
弁護人は、警察官の取り調べで「死んだら反省したと思ってやる」「うじ虫みたいにうねうねするな」などの暴言があったとして、検察に可視化の実施を申し入れ、裁判所には「拘置所の方が違法捜査を抑止できる」と移送を求めた。
地裁堺支部の長瀬敬昭裁判長は同10日付の決定で、暴言の事実は認めなかった一方で「弁護人が問題を主張する南堺署で拘束し続ける捜査上の必要性はない。申し入れにもかかわらず、取り調べの録音・録画も全くされていない」と指摘。簡裁決定を取り消し、収容先を大阪拘置所に指定した。
弁護人は「拘置所職員がいることもあり、移送後の調べでは、大声や侮辱的内容の発言はなくなった」と話している。〔共同〕