【ワシントン=吉野直也】オバマ米政権は近くキューバのテロ支援国家指定解除の手続きに入る方針だ。外交面での成果作りを急ぐ米国としては、キューバの主張を受け入れることで、オバマ大統領とキューバのカストロ国家評議会議長の首脳会談を実現し、キューバとの国交正常化交渉を加速させる狙いがある。
「国務省から指定解除の勧告を受けたら直ちに議会に通告する」。オバマ大統領は7日に放送された公共ラジオ(NPR)のインタビューで、キューバのテロ支援国家解除の手続きに言及し、解除が近いことを示唆した。大統領が承認し、議会に通告した場合、指定解除は通告から45日後に発効するとみられる。
米政府は指定解除に関し、議会の承認は必要ないと見ている。米国がテロ支援国家の指定を解除したのは2008年に北朝鮮に対して実施した例などがある。少なくとも北朝鮮の指定を解除したケースでは、議会に大きな阻止の動きがなくそのまま解除の運びとなった。
しかし、今回は、両院で多数を握る共和党が反発するのは確実だ。キューバとの国交正常化交渉そのものにも反対論は根強く、テロ支援国家の解除にはさらに抵抗するのは必至。議会で共和党が解除に反対する決議をしたり、他の法案を巻き込んだりする恐れもある。オバマ政権の計画通りに進まない可能性も捨てきれない。
両国は1959年のキューバ革命以来、半世紀上にわたり敵対してきた。米政府は61年に同国との国交を断絶。82年にテロ支援国家に指定した。
オバマ政権がこの時期にテロ支援国家の指定解除の手続きに入るのは、10日からパナマで開く米州首脳会議の機会をとらえて、オバマ、カストロ両氏の会談を実施するためだ。米中間選挙での大敗によって求心力を失っているオバマ大統領としては、外交に活路を見いだし、任期終了までの実績作りを狙っている側面もある。また、中南米における反米の中心的存在であるキューバとの雪解けを演出することで、米州域内の国々との経済面を含めた関係改善を進めたいという思惑も垣間見える。
米、キューバ両国は1月以降、3回にわたり国交正常化に向けた高官協議を開催した。米側は米州首脳会議までの大使館再開を要求。一方でキューバはまずテロ支援国家指定の解除を優先するよう主張し、膠着していた。
米側はこうした現状をトップ会談により、打破し、国交正常化交渉を大きく前進させる思惑だ。パナマにはケリー国務長官も同行し、キューバのロドリゲス外相と会う見通し。まず閣僚級と会談をしてから首脳会談につなげる段取りを描く。
ただ、北朝鮮のテロ支援国家解除の判断には、今も批判がある。解除後、核実験や弾道ミサイル発射を公然と繰り返しているためだ。
オバマ氏はパナマに先立ち8、9両日にジャマイカを訪問し、同国のシンプソンミラー首相やカリブ共同体(カリコム)首脳らと会談する。