甲状腺がんは、がんを抑える2種類の遺伝子が機能を失うことによって発症する仕組みを発見したと、佐々木雄彦秋田大教授(医科学)らのチームが16日付の米医学誌に発表した。
2種類のうち、がんを抑える「主ブレーキ役」は回復できないが「補助ブレーキ役」の働きは薬剤で回復できることを、共同研究先の米ハーバード大が確認した。治療薬開発に道を開く成果として注目される。
2つの遺伝子は乳がんや前立腺がんで機能が低下する「INPP4B」と、多くのがん細胞で欠損する「PTEN」。チームは、これらの遺伝子を操作したマウスを作り甲状腺を分析した。
その結果、2つの遺伝子が作るタンパク質はいずれも、がん発症に関わるとされる脂質を分解する働きがあり、脂質の量が少ないときはPTEN、多いときはINPP4Bと、役割を分担して働いていることが分かった。両方の遺伝子がないと、悪性の甲状腺がんを発症することも分かった。
佐々木教授らは甲状腺がんでは、がんを初期段階で抑える主ブレーキ役のPTENがまず機能を失い、補助ブレーキ役のINPP4Bが代わって脂質の分解を担うものの、やがて機能を失い発症に至ると結論づけた。
ハーバード大のチームは薬剤を使い、細胞レベルでINPP4Bの機能回復に成功した。
佐々木教授は「INPP4Bを薬で活性化させることで、がんを制御できる可能性はあると思う」と話した。〔共同〕