【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)は23日、ブリュッセルで緊急の首脳会議を開いた。地中海で移民や難民を乗せた密航船の転覆事故が急増し、多くの死者が出ている問題に対応するため、地中海の監視・救助活動の財源を3倍にすることで合意した。軍事作戦も視野に、密航に使われる恐れのある船を事前に捕まえて破壊する活動の検討でも一致した。
EUのトゥスク大統領は会議終了後に記者会見し「海上での救助とともに、密航を止め、不法な移民の問題に対処することが人々の命を救う」と強調。共同声明には(1)地中海での監視・救助活動の強化(2)密航船の取り締まり(3)不法移民の流入阻止(4)EU域内の連携強化――の4分野の合意を盛り込んだ。
海上の監視・救助活動の強化では、2015年と16年の財源を「少なくとも3倍に増やす」と明記した。欧米メディアによると財源は月間900万ユーロ(約11億5千万円)に増える。事務レベルの調整では財源を2倍にする案を軸に調整していたが、首脳らの判断で上積みし、EUとして貢献する姿勢を強調した。
密航船の取り締まりで柱に据えたのが、密航業者が移民や難民を乗せる前に船を破壊する作戦の導入だ。モゲリーニEU外交安全保障上級代表に、軍事作戦も視野に入れて具体的な方策を早急に提案するよう求めた。
不法移民の流入を防ぐため、地中海を渡ってくる移民の出身国や出港地となっているリビアの周辺国との協力強化も盛り込んだ。EU域内の連携強化策では、難民を加盟国が自主的に国内に受け入れて定住させる試験的なプログラムを提供することでも合意した。EU全体で分担して難民を受け入れる姿勢を強調する狙いがある。