気象庁は6日、箱根山(神奈川県箱根町)の大涌谷周辺で、小規模な水蒸気噴火が発生する恐れがあるとして噴火警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。噴火が起きた場合、大きな噴石に警戒が必要なほか、風下でも火山灰や小さな噴石に注意するよう呼び掛けた。
周辺で小規模な水蒸気噴火が発生する恐れがあるとして噴火警報が発表された箱根山の大涌谷(6日午前、神奈川県箱根町)=共同
箱根山は2009年3月に警戒レベルが導入され、引き上げは今回が初めて。対象自治体は箱根町。5日に観測した火山性地震は観測史上最多の116回を記録した。
箱根町は6日、大涌谷から半径300メートルに避難指示を発表。既に立ち入りを規制しているハイキングコースに加え、大涌谷へ向かう県道も通行止めにした。ロープウエーも運転を見合わせ、バスもルートを変更するなどした。
気象庁によると、5日に発生した震度1の地震3回のうち、午前6時台の2回は地表に近い場所が震源だった一方、午後9時台の1回は深さ約5キロで、より山の内部が震源となった。その上部で熱水の状態が不安定になり、水蒸気噴火が起きる可能性がある。
箱根山では、地質調査から12世紀後半から13世紀ごろに大涌谷付近での噴火があったとみられるが、その後の噴火の記録はない。近年では01年に約4カ月にわたり地震や地殻変動が続き、神奈川県小田原市で震度2の地震を観測。地震の規模のマグニチュード(M)は最大で2.9だった。5日の震度1は3回ともM2.0以上。
6日に記者会見した気象庁の北川貞之火山課長は、01年のケースを参考に警戒レベルの引き上げを判断したとし「震源が深く、マグニチュード2も超え、01年と同様になるのではと考えた」と説明。
具体的な根拠として、火山性地震の活発化、山体の膨張を示すデータの観測、大涌谷で激しく蒸気が噴き出していることの3点を挙げた。マグマの活動が活発化している兆候はない。
箱根山の火山性地震は4月26日から増加傾向となり、5月1日に2回へ減少。2~4日は35回前後で推移した後、5日早朝から急増した。〔共同〕