ハイテク起業家は常に、空に手を伸ばすように大志を抱くことを奨励されてきた。今、2つの新しいアーリーステージの投資ファンドが空飛ぶロボットで空中を埋め尽くすことを目指している。小型無人飛行機「ドローン」の草分けである深圳市大疆創新科技(DJI)と米エアウエアが別々に率いるファンドだ。
ドローン飛行を見る人びと。アジアで初めて開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)の会場で(26日、上海)=AP
DJIは5月初旬に同社に7500万ドル出資したベンチャーキャピタル(VC)企業、アクセルパートナーズと組み、27日に「スカイファンド」を立ち上げた。両社は初期の投資として1000万ドルを確約。無人航空機(UAV)関連の基幹技術と商業的応用を対象とし、個々の投資は25万ドルからとする。
企業価値が80億ドル超と評価されている深圳のDJIは、クワッドヘリ(離陸・推進に4つの回転翼を使う航空機)「ファントム」シリーズの人気のおかげで、ドローン市場で初期のリーダーとなった。
■「無人航空機の生態系を加速」
「これは企業が技術、マーケティング両面でDJIと強い関係を築く一つの方法だが、ファンドの憲章はそれより大きい。本当の目的は、このUAVエコシステム(生態系)を加速させることだ」。DJIへの出資を率いたアクセルのパートナー、サミーア・ガンディ氏はこう話す。
米カリフォルニア州に本社を置くドローン新興企業のエアウエアは、競合する投資ファンド「コマーシャル・ドローン・ファンド」の創設を発表した。スカイファンドと同じような発展段階にある企業を狙い、センサーやソフトウエア、データ分析、サービス、そして鉱業や建設、インフラ検査といった分野の業界特有のシステムに最大100万ドル投資する。
商用ドローン向けに設計されたOS(基本ソフト)を作るエアウエアは、資金を拠出する有限責任パートナーの名前やファンドが使える資金の総額を明かすことを拒んだが、今後2年間で「数十社」のベンチャー企業に投資する計画だと述べた。
「商用ドローン産業は急速に進化しているが、エコシステムにはまだギャップが見られる」。エアウエア最高経営責任者(CEO)のジョナサン・ダウニー氏はこう言う。「コマーシャル・ドローン・ファンドは重要なドローン関連構想を推進している有望企業を特定し、後押しする」
同ファンドの最初の投資先は、データ分析を提供するパリのレッドバードと、石油・ガス産業向けのドローンを開発しているロンドンのスカイフューチャーズだ。
垂直的な投資ファンドは生まれたばかりの産業に弾みをつけるために使われることが多い。過去の例には、VC企業クライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)が「iPhone(アイフォーン)」のアプリ開発に拍車をかけるために2008年に1億ドルで創設した「iファンド」などがある。
KPCBは13年、メガネ型のウエアラブル端末「グーグルグラス」を試すベンチャー企業を支援するために、同業のベンチャーファンド、アンドリーセン・ホロウィッツと、グーグルのVC部門であるグーグル・ベンチャーズと組んだ。
By Tim Bradshaw in San Francisco
(2015年 月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(翻訳協力 JBpress)
(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.