和歌山県太地町の追い込み漁で捕獲された生きたイルカの約半数が、中国をトップに韓国、ロシアなど海外へ輸出されていることが8日までに、各種統計から分かった。
世界動物園水族館協会(スイス)は日本の水族館による太地町のイルカ入手を問題視し、日本動物園水族館協会の会員資格を停止したが、世界各地の水族館に需要のあることが判明した。
中国への輸出は最近5年間で200頭以上。世界協会のホームページによると、水族館数が増えている中国では香港の2施設が単体加盟しているが、日本のような団体加盟はない。
太地町の追い込み漁で和歌山県が捕獲を許可し、漁獲枠が設定されている鯨類はバンドウイルカやカマイルカ、ハナゴンドウなど7種。国立研究開発法人「水産総合研究センター」の統計によると、2009年9月~14年8月の生体販売数は計760頭だった。
財務省の貿易統計によると、同期間の鯨類などの生体輸出は計354頭。この間、太地町以外に漁による生体販売の実績はなく、「ほぼ全てが同町で捕獲された小型鯨類とみられる」(水産庁関係者)。輸出先は中国216頭、ウクライナ36頭、韓国35頭、ロシア15頭など12カ国に及び、米国1頭も含まれる。
関係者によると、太地町のイルカは日本協会の加盟施設に2~3割が販売され、他は協会非加盟の水族館や専門業者に回る。輸出は専門業者が手掛け、太地町漁協が直接関わることはない。
野生動植物保護を定めたワシントン条約に基づく貿易に関する国連統計によると、太地町で捕獲される鯨類7種の09~13年の日本からの生体輸出は、ほぼ全てが動物園(水族館)向けに許可が出された。米国への1頭も12年の動物園向けのマゴンドウとみられる。
関西地方のある水族館関係者は「世界協会はあくまで欧米中心の団体。イルカの世界市場はアジア各国などに広がっているが、今回は協会員である日本だけが標的にされた」と批判している。〔共同〕