政府は地域を限定して規制を緩和する国家戦略特区に関する初の評価をまとめた。東京圏(東京都と神奈川県の全域、千葉県成田市)は2月までに42事業を認定。都心再開発は10件で経済波及効果が計2兆4500億円と試算した。医療や創業支援の分野は遅れが目立つことを指摘。公園内保育所や民泊は「極めて有意義」などとして地域拡大を求めている。
【都市再生】東京圏は2020年五輪・パラリンピックも視野に、「世界で一番ビジネスのしやすい環境」を整備する目標を掲げる。都心で再開発の手続きを簡素化してスピードアップする事業は、三井不動産が日比谷地区に文化発信拠点となる超高層ビルを整備する計画や、都市再生機構による虎ノ門での日比谷線新駅計画など10件をこれまでに認定している。
「おおむね順調に進捗している」として、経済波及効果が約2兆4500億円に上るとの推計も公表した。一方、都心居住を促すための住宅容積率の緩和は実現しておらず「早期の活用が大きな課題」と指摘した。
道路占用の規制を緩和して、にぎわいを創出するエリアマネジメント事業は、丸の内仲通りや新宿副都心など都内5地域で展開。経済波及効果は少なくとも13億円と見積もった。ただ一過性のイベントが多いことから、より頻度を高め、継続的に取り組みを進めるよう促している。
【ビジネス支援】都は昨年10月、公証役場以外で企業の定款認証を受け付ける事業を始めたが、利用状況は低調。今年1月に始めた外国人の創業支援の事業も受け入れ実績がまだない。いずれも制度のPRや周知徹底が課題と位置づけた。
【暮らし】保険外併用療養(混合診療)は7病院を認定しているが、実績は東京大学病院の胃がん治療薬の適応拡大の2件のみで、本来の目標である国内未承認薬の併用は実現していない。「直ちに活用することが喫緊の課題」と注文をつけた。
待機児童の解消に貢献する公園内保育所は荒川区と世田谷区、訪日外国人の急増に対応する民泊の事業は大田区でスタート。それぞれ都内の他区や神奈川県などへの拡大を求めた。
評価は2014年5月に特区指定した全国6区域それぞれについて、官民の関係者で構成する区域会議で決定し、近く安倍晋三首相に報告する。 今後、1年ごとに評価をまとめ、特区事業の進捗管理に役立てる。東京圏ではまだ進んでいない農林水産業の分野の取り組みなどが16年度以降の焦点になりそうだ。「さらに大胆な規制改革事項の提案」も引き続き求められる。