逮捕前、自宅前に姿を見せた田母神俊雄容疑者=14日午前8時15分、東京都世田谷区、関田航撮影
保守系の論客として知られた元航空幕僚長で軍事評論家の田母神俊雄容疑者(67)が、東京地検特捜部に逮捕された。約60万票を集めた2年前の東京都知事選で、運動員らを買収した疑いが持たれている。田母神容疑者はこれまでの取材に容疑を否定していた。
田母神・元空幕長を逮捕 選挙運動員に現金配った疑い
田母神容疑者は14日朝、自身のツイッターで「本日、田母神は逮捕されるようです。何とも理不尽さを感じますが、国家権力にはかないません」とつぶやいた。
東京地検へ向かう前に自宅マンションで報道陣から支援者への思いを聞かれ、「大変申し訳ない」と話した。運動員らへの現金配布について、指示も了承もしていないとするこれまでの主張に「変わりはない」と述べ、タクシーに乗り込んだ。一方、陣営の選挙対策事務局長を務めた島本順光容疑者(69)は自宅近くで「違法の認識はなかった」と話し、事情聴取に向かった。
田母神容疑者は航空自衛隊トップの航空幕僚長だった2008年、「我が国が侵略国家だったというのはぬれぎぬ」と主張する論文を発表。政府見解を否定する内容で、更迭された。だがこれを機に知名度が高まり、保守派の論客として全国各地の講演会に招かれ、著書も多数出版した。
14年の都知事選では特定の政党や業界の支援は受けずに約60万票を獲得。資金管理団体には同年、個人からの寄付を中心に約1億3千万円が集まった。「新しい保守の政治勢力が誕生したと盛り上がった」と陣営幹部は振り返る。
同年12月の衆院選では東京12区に次世代の党から立候補したが、約3万9千票にとどまり、4候補中、最下位で落選。今年7月の参院選への立候補にも意欲を見せていた。だが、特捜部が今年3月に関係先の捜索に乗り出すと、田母神容疑者は「出馬は難しい。悪名がとどろいてしまった」と述べ、立候補を断念した。
選挙を支援した男性は「思想に共感した支持者の信奉は熱かっただけに、お金の問題が出たのは残念でならない。寄付してくれた支持者を裏切った責任は重い」と批判した。(久保田一道、藤原学思)
■田母神俊雄容疑者をめぐる経緯
2014年2月 東京都知事選に立候補し、60万票余りを集めるが、落選
12月 衆院選東京12区で次世代の党から立候補するが落選
15年2月 田母神容疑者が記者会見し、知事選時の選挙対策本部の会計責任者が約3千万円を流用したと発表
12月 知事選時の選挙対策本部長が、政治資金を横領した疑いで田母神容疑者らを東京地検に刑事告発
16年3月 東京地検特捜部が田母神容疑者の関係先を家宅捜索