三井化学は、NPO法人のチームレスキューと連携して、地震の被災地へ膨らませると枕やざぶとんになる「エア・ざぶとん」を提供した=16日、熊本市内、三井化学提供
熊本地震の被災地に支援物資を届ける企業の動きが本格化してきた。東日本大震災など過去の災害の教訓で開発された商品もある。ただ余震が続き、インフラも寸断された中で受け入れ体制は整っておらず、各社は状況を見極めながら支援を進めている。
企業による被災地支援の動きも本格化している。「すき家」を展開するゼンショーホールディングスは18日、約2千人が避難する熊本県益城町の「阿蘇熊本空港ホテルエミナース」で、昼と夜の2回、温かい牛丼計2500食を無料で提供した。東京都内から調理設備のあるキッチンカーを出し、8人のスタッフが温かい牛丼を炊き出した。19日以降も続ける予定だ。広報担当者は「温かい牛丼で少しでも喜んでもらい、避難生活を乗り切ってほしい」。
震災直後は飲食料品の要望が高いが、日用品のニーズも増えてくる。花王やユニ・チャームなど衛生用品メーカー各社は、業界団体を通じて18日までに子ども用おむつ6万枚、大人用おむつ2万枚、生理用品2万6400枚を支援した。ライオンも17日中に益城町にウェットシート480個や960人分の歯ブラシと歯磨き粉を送った。
セブン&アイ・ホールディングスは17日は食べ物ではなく、毛布200枚や下着500枚、靴下1千足にした。「避難者のニーズをみながら、自治体と協議し物資を考えたい」(広報)。ファミリーマートも17日は栄養ドリンクや焼き菓子、紙おむつなどを送った。
江崎グリコは、賞味期限が5年の「保存用ビスコ」などを熊本県庁に18日以降、順次届ける。普段に近いお菓子を楽しんで欲しいとの思いを込めた。東日本大震災の教訓でその後、運びやすく備えやすいようにパック詰めにした。
狭い自動車で寝泊まりする被災者が多いことから、医療機器のテルモは18日、「旅行者血栓症(エコノミークラス症候群)」の低減に役立つ弾性ストッキングを2千足送ることを決めた。筋力の低下で転倒する危険がある高齢者向けに転倒予防靴下3千足も送る。
三井化学は18日までに、ストローで膨らますと枕やマットレスとしても使える「エア・ざぶとん」1千枚を熊本市に届けた。薄いフィルムで、ホックで3枚をつなげれば大人が寝られるベッドにもなる。硬い床や冷気から体を守れる。
食品や建材用のポリエチレンフィルムなどを販売する和弘プラスチック工業(大阪府八尾市、真鍋光弘社長)が、三井化学の素材を使い、2013年から売る商品。東日本大震災の時に、段ボールを敷いて寝ていた被災者の「床に敷くものが欲しい」という声を聞いて開発した。三井化学は15年から震災時の支援物資として備蓄。鬼怒川が決壊した15年9月の関東・東北豪雨でも提供したという。
■受け入れ体制、見極めも
支援の内容や時期を見極めている企業もある。物資は自治体や日本赤十字社を通じて避難所に届くが、受け入れにも人手がかかり、現地の体制が整っていなければ混乱するからだ。
東日本大震災でハンドソープや水がなくても使えるシャンプーを送った資生堂は、18日夕方時点では被災地の要請を待っている状態という。「受け入れ体制が整わないとかえって迷惑になる」として自治体などと調整している。
また、医薬品の場合は多くが医師の処方が必要だ。日本製薬工業協会によると、厚生労働省の指示を受けてから、製薬企業に支援を依頼する形になるという。武田薬品工業は「要請があればすぐ支援できるよう準備を進めている」としている。