日本の大使館に当たる交流協会台北事務所前に集まり、漁船拿捕(だほ)に抗議する台湾の漁民ら=27日、台北、鵜飼啓撮影
台湾の馬英九(マーインチウ)総統は27日、安全保障担当の高官会議を開き、日本最南端の沖ノ鳥島について「島ではなく岩礁」とし、日本は排他的経済水域(EEZ)を設定できないと主張した。馬氏はこの海域で操業する台湾漁民の保護を指示。5月20日の退任を前に日本や対日重視を掲げる次期政権を牽制(けんせい)する狙いと見られる。
EEZには沿岸国に天然資源開発の権利があり、沿岸から200カイリ(約370キロ)内に設けられるが、岩には設定できない。沖ノ鳥島については中国や韓国が「岩」と主張。台湾の外交部は「(島か岩か)国際法上の地位について争いがある」としていたが、岩だとの明言は避けていた。
外交部は沖ノ鳥島周辺に日本がEEZを設定できるかどうかには議論があるとしつつ、2014年には日本の取り締まりによるトラブルを避けるためとして、この海域での操業を控えるよう漁民に働きかけていた。だが、この海域で操業した台湾漁船の船長が25日、海上保安庁に無許可操業の疑いで逮捕され、漁民らの間で反発が広がった。
船長は担保金を払って釈放されたが、張善政(チャンシャンチョン)・行政院長(首相)は26日、「畳3枚分の大きさ。どうやったら島と言えるのか」などと言及。馬氏は会議で、公文書では「沖ノ鳥島」という言葉を使わずに「沖ノ鳥礁」と表記するよう指示した。海岸巡防署(海上保安庁に相当)などに漁民保護のための具体策立案も求めた。野党・民進党主席の蔡英文(ツァイインウェン)・次期総統の就任後も簡単に変更できないようにする思惑がありそうだ。
27日は、台北市にある日本の対台窓口機関、交流協会の事務所前で漁民らが与野党の立法委員(国会議員)らと日本への抗議活動を展開。建物に向かって生卵を投げる一幕もあった。(台北=鵜飼啓)