海音寺潮五郎(1901~77)。67年、東京都世田谷区の自宅で
■文豪の朗読
《海音寺潮五郎が読む「武将列伝」 本郷和人が聴く》
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他の国より強烈に機能する日本における「世襲」の原理と社会の関係を時間軸にそって考察することは、歴史研究者としての私の重要なテーマの一つである。国内の政争や戦乱がさまで凄惨(せいさん)にならず、比較的おだやかに時勢が推移してきたのは事の善悪はさておいて「世襲」重視と関連あり、というのが私の見立てだが、そうした時に問題になるのが明治維新である。明治新政府は日本史上で唯一「世襲」に重きを置かなかった組織であるが、「富国強兵」と「才能重視」は200万人を超える犠牲者を出したあの痛ましい戦争とどういう因果関係をもつのか。太平洋戦争を必然的に招来するがゆえに、明治維新自体が失敗であったと考察する向きもあるが、そこに理があるか否か。
作家・海音寺潮五郎は「明治維…