立てこもり事件が起きた仏北西部ルーアン近郊の教会は26日、警察によって立ち入りが禁止されていた=AFP時事
仏北西部ルーアン近郊で26日朝、刃物で武装した2人の男が教会に押し入り、教会内にいた80代の司祭や信者ら5人を人質に取り、立てこもった。特殊部隊らが突入し、2人を射殺した。仏内務省は人質のうち司祭が死亡、1人が重体、残る3人は解放されたと発表した。現場を訪れたオランド大統領は「(2人は)過激派組織『イスラム国』(IS)を名乗った」と記者団に語り、犯行はISによるテロと断定した。
過激派組織「イスラム国」(IS)系の通信社「アマク」は同日、「(対ISの)十字軍連合国を狙えという呼びかけに呼応した作戦だった」との記事を配信し、2人は「IS戦士だ」と述べた。
AFP通信によると、2人のうち1人が昨年シリアに渡ろうとし、テロ行為に関わる恐れがあるとして身柄を拘束されていた。その後も情報機関の監視対象だったと、捜査関係者の話として伝えた。またこの事件に関わり、捜査当局は1人の身柄を拘束した。
武装した2人が教会に押し入ったのは同日午前9時45分ごろ。教会内ではミサが行われており、聖職者や信者らがいたという。殺害された司祭や重体のけが人は、いずれものどを切られたという。2人は動かないピストルや偽の爆発物を持って人質らに見せていた。今のところ実際の爆発物は確認されていない。
フランスでは南部ニースで、大型トラックで花火の見物客84人を殺害するテロ事件が約2週間前に起きたばかり。7月下旬までの予定だった非常事態宣言の6カ月間の延長を決めて、全土で厳戒態勢を敷いていた。
バチカン(ローマ法王庁)のロンバルディ報道官は事件を受け、「いかなるかたちの憎しみに対しても最も強い方法で非難する」との声明を発表した。
トラックを暴走させるという「新たな手口」(カズヌーブ内相)に続き、今回のテロでは刃物でのどを切るという、ISがしばしば誇示してきた残忍な手段。「フランスの魂が狙われた」(サルコジ前大統領)と衝撃が広がった。
オランド大統領は「彼らは我々を分断しようとしている。あらゆる手段でテロリストと戦い抜かないといけない」と語った。(パリ=高久潤、ドバイ=渡辺淳基)