高潮時の浸水想定区域と地下鉄道網
過去の大型台風から想定される最悪の高潮が起こった場合、地下街や地下の鉄道が広がる大阪市で最大84・5平方キロメートル、市内と周辺の141駅が浸水する――。そんな被害想定を、国土交通省近畿地方整備局や大阪府・市などでつくる検討会がまとめた。最大で64・2万人が、身動きが取れない「孤立」になるとしている。
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「大阪大規模都市水害対策検討会」が3日、大阪市内で開催され、想定を盛り込んだ「大阪大規模都市水害対策ガイドライン」案の中間とりまとめが示された。検討会は今年度末までに、国や自治体などの行動計画などを盛り込み、ガイドラインを完成させる方針。
第2室戸台風や伊勢湾台風の勢力や移動速度などから、最悪の高潮をもたらす台風を想定。安治川、尻無川、木津川にある「三大水門」と呼ばれるアーチ型水門や堤防30カ所以上が壊れることを前提にした。
台風が四国に上陸してから4時間後には梅田、5時間後には心斎橋や難波で地下への浸水が始まる。上陸から8時間後には心斎橋、11時間後には梅田の地下街が水没する。浸水域は17時間後まで拡大。住之江区では、浸水深(地面から水面までの高さ)が13・7メートルにも達する。
地下街や地下の鉄道の利用者が地上に避難できた場合でも死者は約380人。市内の排水ポンプがすべて順調に動いても、排水が完全に終わるのは上陸の92時間後となる。
市営地下鉄や近鉄、京阪電鉄、阪急電鉄など23路線の地上駅も含めた計141駅が浸水。これらの駅の乗降客は1日あたり平均450万人で、鉄道の復旧には約3カ月かかると予測する。
一方、千年に1度の規模の豪雨に伴う洪水で、梅田に最も大きな影響が出るケースも想定。JR大阪駅から約2キロ北東の北区にある淀川左岸の堤防が決壊。時速約1キロで浸水が進み、2時間後に浸水区域が大阪駅に到達し、3時間後には梅田地下街への浸水が始まる。最大で北区と福島区の7・2平方キロメートルが浸水する。区域内の夜間人口は約12万人。順調に避難できても約10人の死者が出る。孤立はピーク時で6・4万人に達する。
地下鉄が通る空間を通じて水が広がる守口市の大日駅、門真市の門真南駅なども含め、14路線の100駅が浸水するという。(上田真由美)