旅行には果たして認知症を防ぐ効果があるのか――旅の頻度と、認知機能や「幸福度」との関連を探るユニークな研究を、旅行会社クラブツーリズムが東北大学加齢医学研究所と協力して7月から始めた。元気な人ほどたくさん旅行することも考えられるため、旅行前後の変化を3年にわたり調べるという。
介護とわたしたち
研究所の滝靖之教授(脳科学)によると、同社のツアーに参加経験のある60歳以上の日本人60人を募集。磁気共鳴画像装置(MRI)で測る脳の体積や認知機能の成績のほか、「人生は面白いか」「どの程度、成功したと感じているか」といった質問で調べる幸福度の変化を、経験した旅行回数と比べて分析するという。
研究に先立ち60歳以上の顧客45人にアンケートしたところ、過去5年間の旅行回数が多いほど人生を肯定的にとらえる人が多い傾向が出た。ストレスが低い人ほど血管の老化が抑えられ、高い認知機能も維持されると考えられるという。
クラブツーリズムは顧客の65%が60歳以上と、シニア世代に強い。担当者は「旅行の健康改善効果を科学的に解明し、より質の高い商品やサービスを提供したい」と説明している。
厚生労働省は、2012年に462万人だった認知症患者が25年には約700万人に急増すると推計している。(小宮山亮磨)