全車両2階建てのJR東日本の215系。両端部のドアから乗った客は、階段で中央部の1階か2階に移動する=JR東京駅、工藤隆治撮影
東京都の小池百合子知事が知事選で公約に掲げた「満員電車ゼロ」。その方策の一つが2階建て車両の導入だ。鉄道会社は「遅延を招く」と本格導入に否定的だが、小池知事にアイデアを提供した元JRマンは、技術的にもコスト的にも実現可能だと訴える。
特集:小池都政
「満員電車での通勤は、社会から活力を低下させかねない」
小池知事は9月28日の東京都議会での所信表明演説でこう強調した。選挙公約で「満員電車ゼロ」を掲げ、そのための2階建て電車の導入を訴えてきた。
2階建て車両は、実はすでに実用化している。東海道新幹線で1985年に登場し、上越新幹線では全車両2階建ての「Max」もある。JRの在来線では東海道、横須賀、総武、常磐などの各線で約400両がグリーン車に使われている。全車両が2階建ての215系は、東海道線の混雑緩和用に開発され、1992年から走っている。
ただ、これらの2階建て車両は、中央が2階建てで、両端の1階部分にドアがある。乗り降りには両端への移動と階段の上り下りが必要で、4ドアや6ドアの車両より時間がかかる。朝夕のラッシュ時には致命的だ。215系はたびたび遅れ、現在は平日の朝夕に「湘南ライナー」などでわずかに使われるくらいとなった。
JR東日本の冨田哲郎社長は「2階建ては混乱や遅延を招き、(混雑の激しい)山手線や中央線に導入するのは難しい」と話す。
これに対し、小池知事にアイデアを提供した交通コンサルタント会社「ライトレール」の阿部等社長(55)は、「私の考える2階建て車両は全く別物」と話す。阿部さんは元JR東社員。08年の著書「満員電車がなくなる日」には、当時衆院議員だった小池知事が推薦文を寄せた。知事選で助言を求められ、テレビ出演時の資料を阿部さんが作ったという。
阿部さんの提唱する2階建て車…