東日本大震災で住宅の被害が大きかった高齢被災者ほど認知症の症状が進んでいたことが、米ハーバード大などの研究でわかった。災害後は心的外傷後ストレス障害(PTSD)だけでなく、認知症にも配慮する必要性があるという。25日以降、米科学アカデミー紀要電子版で発表する。
介護とわたしたち
グループは、2010年8月に宮城県岩沼市の65歳以上の高齢者の生活や健康状態について調査していた。その7カ月後に東日本大震災が発生し、岩沼市の約48%が津波に浸水した。13年10月に追跡調査し、3594人の回答を得た。
介護保険の認定調査などで使われる認知症の人の生活の自立度で、震災の前後の変化をみた。震災前に認知症の判定を受けていた人は4・1%だったが、震災後は11・5%に増えていた。
脳卒中など認知症のリスク要因の影響を除き、住宅の被災との関係を調べた。住宅が大規模半壊した人は、被害がなかった人に比べて認知症の症状が進み、全壊した人はさらに進む傾向があったことが確認できた。影響は歩行時間の減少や脳卒中の発症より大きかった。
米ハーバード大の引地博之客員研究員は「住宅被害で慣れない環境に引っ越して、地域のコミュニケーションが減ったことなどが影響した可能性がある」と話している。(瀬川茂子)