大津市の越直美市長=大津市御陵町の大津市役所
いじめを理由に中学生が自殺した問題に取り組んだ越直美・大津市長に、いじめ対策の現状と課題を聞いた。
――大津市の中学生がいじめで自殺したのをきっかけにできた「いじめ防止対策推進法」が施行から3年たちました。
法律の成果と課題は大きく3点あります。国全体でいじめを防ごうという法律ができたことの意味は非常に大きい。学校現場で「いじめを防いでいこう」という機運が高まりました。
大津市の中学生が、いじめが原因で自殺したのは2011年10月11日。大きく報じられたのは翌年の7月です。大津市のいじめの認知件数は、事件前は小中合わせて年間50件程度だったのが、事件後の12年度以降は疑いを含め400件以上になり、その後も増えている。私は、いじめの認知件数が増えるのは悪いことではないと思います。学校現場が注意深く子どもたちを見ている指標だと考えているからです。減る方が関心が薄れているということ。日本では、いじめ問題が大きく報じられると認知件数が増え、翌年から減り、再び問題が起きると増える、という繰り返しです。
――二つ目は。
お子さんが亡くなるような重大事態が起こった時、調査が行われるようになったことです。
大津の事件では、私が市長になる前に、市の教育委員会や中学校が調査をしたと言っていたが、外部の専門家の観点から検証されていませんでした。私は市長に就任後、遺族とお話しし、調査が大事だと考えた。全国の遺族の願いは同じです。まず、学校で何があったのかを知りたい、そして二度とこういうことが起きてほしくない、と。
再発防止には、外部の専門家の目が入った調査があって初めて、後につながります。市長になって調査を始める際、過去の事例を調べても、調査をされた事例はほとんどありませんでした。法律ができたことで、少なくとも調査をしなければいけない、というところまできました。
国が法律なり規則で、調査委員会の公正さを担保するための委員構成を示す。例えば、市の推薦3人、遺族推薦3人とか、利害関係人を入れずに調査するとか、遺族に公表すべきだとか、そういうところをもっと定めるべきです。そうでなければ、遺族が納得できる調査はできません。