事故現場近くに新たに設けられた「歩行者注意」の路面標示=横浜市港南区大久保1丁目、前田朱莉亜撮影
横浜市港南区の市道で集団登校中の児童の列に軽トラックが突っ込み、市立桜岡小学校1年の田代優(まさる)君(6)が死亡、児童4人が重軽傷を負った事故から28日で1カ月が経った。現場となった通学路の安全をどう確保するか、模索が続いている。交通量の多い生活道路で思い切った対策はとれず、決め手がないのが現状だ。
通学路、なぜ制限速度ない? 横浜・小1死亡事故現場
利用者の多い京急上大岡駅の西側。子どもたちが登校する平日の午前8時前後は、通勤ラッシュの時間帯だ。事故のあった市道は幅5・2メートル。5分ほどの間隔でバスが走り、停車のたびに渋滞が起こる。2歳の息子を抱えた40代の女性は、「危なくて歩かせられない」。桜岡小の児童はこの市道を避けて登校する対応を続けている。
事故を受け、保護者が通学路の安全確保を求める署名活動を展開し、約450人分を集めた。だが、市は「事故は高齢者による無謀な運転が原因。道路の状況を考えると、ガードレールを連続的に設置することは困難」などと文書で回答。路面の「スクールゾーン」の文字を塗り直し、2カ所で「歩行者注意」と標示を新設したにとどまる。
ただ、市は部分的にガードレールを設置する案など、引き続き対応を検討。保護者らでつくる「スクールゾーン対策協議会」も臨時に組織されるという。
一方、神奈川県警交通規制課は交通量を減らすために車の流れを逆にする対策を検討したが、交通量を調べた結果、効果が小さいと判断したという。この市道は法定の時速60キロで走行できることから、保護者の間には速度制限を求める声もある。だが、同課は「もともと時速30キロ以上で走る車が少ない」などとしており、速度制限は具体化していない。(前田朱莉亜)