記者会見する金属労協の相原康伸議長=2日、東京都内、榊原謙撮影
自動車や電機などの産業別労働組合が加盟する金属労協が2日、2017年春闘の方針を示し、前年と同じ「ベア3千円以上」の要求を掲げた。自動車を中心に業績の減速傾向がみられるものの、全体として経済環境は前年並みと判断。傘下の自動車総連と電機連合もこの方針に沿い、「ベア3千円以上」の目標を打ち出す方針だ。
賃金体系全体を底上げするベア要求は4年連続。16年春闘では、中小企業の賃上げを優先課題に掲げた。しかし、賃上げを求めた傘下の組合のうち会社側が応じたのは、従業員300人未満の中小企業では6割だけ。獲得率が9割に上った大企業の労組との格差を縮めることはできなかった。
保護主義を掲げるトランプ米次期大統領の登場で、自動車や電機など輸出型産業の先行きは読みにくくなっている。足元で進む急速な円安は好材料だが、振れ幅の大きさは経営者の不安心理も招きやすい。金属労協としては「それでも前年から要求水準を下げなかったことが、中小企業ではプラスに働くのではないか」(幹部)との期待がある。
近年は政府主導の「官製春闘」によるベアが進んだが、消費は思うように伸びていない。ベアの恩恵を受けにくい非正規労働者の増加も背景とされる。相原康伸議長(トヨタ出身、自動車総連会長)はこの日の記者会見で「非正規労働者をはじめとした多くの働き手の処遇改善が重要」と述べ、労組加入を促す取り組みを強める方針も示した。