国立大の2次試験に出された「記述式」の内訳
2015年度に82国立大で出された2次試験の問題2万4066問の中で、短文、長文で答える問題や小論文、数式などの「記述式」が全体の88%に上ることが、東北大の研究者グループの調査でわかった。大学入試改革では「記述式」をどのように導入するかが焦点だが、すでに国立大の2次では記述式が広がっているとも言え、今後の改革論議に影響しそうだ。
特集:大学入試センター試験
東北大の倉元直樹教授、宮本友弘准教授(教育測定学)が四つの大学院大学を除く全82国立大の前期・後期試験で出された全教科の問題を枝問まで分析した。
客観的に採点できる○×式や選択式でなく、採点に人の判断が必要な短答式や数式、英作文などを「記述式」と定義すると、全2万4066問中、2万1065問(88%)が該当した。
最も多かったのは「数式」で全体の26%。次いで論旨に合うように文中の空白を埋めるなどの「穴埋め式」25%▽「短答式」21%▽40字超の「長文」13%▽40字以下の「短文」6%▽100字以上で意見を書く「小論文」4%だった。
志願者ベースでみると、「長文」を課した学部・学科の志願者は全体の67%、「数式」65%、「短文」51%、「英作文」34%、「小論文」22%、図や絵が36%などだった。
文部科学省は大学入試センター試験に代わる新共通テストで、国語の記述式について短文で答える問題と、より字数の多い問題の2パターンを出す方針だ。同省が記述式を課す根拠としたのが、国立大の16年度の2次試験で、国語や小論文、総合問題のいずれも課さない学部の募集定員が全体の6割を超えるというデータだ。
一方、国立大学協会は国立大の全受験生に対し、共通テストの国語で短文形式を課したうえ、国語に限らず、より字数が多く難易度の高い問題を2次試験で出す方針を示している。
倉元教授らの調査について、大学入試改革に関する文科省の有識者会議委員だった南風原(はえばら)朝和(ともかず)・東京大副学長は「記述式の割合は、国語のみの数値が全科目を通してのもののように誤解されることがあった」とし、「今回の調査結果は国立大の実態を反映している」と評価。「国立大が独自に記述式を広く課している以上、共通テストで多額のお金をかけて1、2問導入する必要がどこまであるか考えるべきだ」と語る。
一方、文科省の角田喜彦(かくたよしひこ)大学振興課長は「今回のデータはどんな質の問題かまでは分析されていない」と指摘。「改革でめざす記述式は複数の情報から考えを組み立てて表現する新タイプ。国語は全教科の基礎であり、私学も含めた受験生の力を問うには、共通テストでの出題が欠かせない」と話している。(編集委員・氏岡真弓)