大規模火災で炎と煙が上がる新潟県糸魚川市の市街地=22日午後3時2分、朝日新聞社機から、堀英治撮影
料理店付近から上がった炎は強い南風にあおられて次々に燃え広がり、木造住宅が密集する中心街は火に包まれた。新潟県糸魚川市で22日、約140棟が延焼した火災は、東日本大震災を除いて、過去20年で国内最多の焼損棟数となった。避難所に身を寄せた人々は、震える夜を過ごした。
新潟県糸魚川市で大規模火災 140棟延焼、避難勧告も
火災は火元から北へ約300メートル、東西約250メートルにわたって燃え広がった。
糸魚川市消防本部によると、午前10時28分に119番通報があり、7分後には消防車が到着。当初は6台で消火にあたった。消防士らは火元の火の勢いを抑えようとしたが、狭い道も多く、住宅密集地でもあるため、放水作業ができる箇所が限られていたという。小野浩・消防防災課長は「風が強く、どんどん飛び火して、消火作業が追いつかなかった」と説明する。
当時、日本海の低気圧に向かって強い南風が吹いていた。気象庁によると、糸魚川市では午前10時過ぎに14・2メートルの最大風速を記録し、最大瞬間風速は正午すぎに24・2メートルに達した。
この強風で「フェーン現象」が起きたと気象庁はみる。山を越えた風が日本海側に吹き下ろす際、空気が乾いて気温が上がる現象だ。糸魚川市では正午までに20度近くまで気温が上昇。隣の上越市では湿度が40%台と乾いていた。
現場付近は商業地域に指定され、建ぺい率や容積率が住宅地より高く、木造の建物が密集する要因にもなっていた。準防火地域でもあり、耐火性を高めなければならない防火地域より規制が緩かった。
同消防本部は通報から1時間半後の正午に近隣消防に支援を求め、午後0時半に新潟県に連絡した。県内と富山県の計18の消防本部が応援に加わったが、火勢は夜まで衰えなかった。消火活動が長引き、企業の生コン車や国土交通省の散水車も集めて水を補給した。
総務省消防庁の担当者は「現場に到着した消防隊は真っ先に火元から周辺への延焼防止にかかる。今回はそれを上回る状況だったかもしれない」と話す。火災の規模と比べて、けが人が少ないとみられる点については「昼間の火災で周囲の住民が早く気づき、避難ができたのでは。夜に起きていれば、人的被害が増えた恐れがある」とみている。