米ハワイを訪問中の安倍晋三首相は27日午後(日本時間28日朝)、真珠湾でオバマ大統領とともに演説を行った。
特集:首相、真珠湾訪問
長岡戦災資料館(新潟県長岡市)の顧問、古田島(こだじま)吉輝さん(80)は28日朝、安倍首相の演説をテレビで見た。「不戦の誓い」「平和国家としての歩み」の言葉に共感したという。
同市は真珠湾攻撃を指揮した山本五十六・連合艦隊司令長官の出身地。同館は真珠湾のアリゾナ記念館との交流を続けている。「これを機に戦争の歴史への関心が高まってほしい。資料館に見学に来る子どもたちにも不戦の思いを伝えたい」
沖縄県うるま市の上原清さん(82)は今回の訪問について「よかったとは思うが、手放しでは喜べない」と語る。1944年8月、学童疎開船「対馬丸」が米潜水艦に撃沈され、約1500人が犠牲になった悲劇の語り部を続けている。上原さんは対馬丸の生存者の一人だ。
沖縄は今も日米の戦争の後遺症を背負っていると感じる。兄を失った沖縄戦、戦後の米軍統治、そして今の基地問題。「過去の傷を越えて和解することは大切。でも、沖縄の今の傷は忘れられているようです」
日本原水爆被害者団体協議会の代表委員、岩佐幹三さん(87)は「『不戦』の言葉はいいが、中身が伴っていない」と言う。核兵器禁止条約の交渉開始を巡る国連総会で、日本が決議に反対したのが歯がゆいという。「平和国家としての具体的な行動が求められているのに、首相の言葉にはそれが感じられない」
保守派からも疑問の声があがる。国学院大講師(神道学)の高森明勅さん(59)は今回の訪問前、ブログに「(安倍首相は)わが国の英霊への慰霊は見送り続けている」と書いた。安倍首相はかつての持論を封印し、2013年12月を最後に靖国神社を参拝していない。高森さんは「真珠湾訪問は責められないが、順序が違う。日本の指導者が米国に過度に歩み寄るのは残念だ」と言う。(岩崎生之助、上遠野郷)