明かりをともした電通本社ビル(中央)=28日午後5時5分、東京都港区、長島一浩撮影
大きな波紋を呼んだ広告大手・電通の新入社員の過労自殺。仕事納めの28日、会社と上司が書類送検され、電通の社長は辞任を表明した。
電通社長、来年1月に辞任 過労自殺「深く責任感じる」
特集:電通・過労自殺問題
「強制捜査された時点でどのみちこうなると思っていた。社長が辞めることも驚きではない。この1カ月くらい、社内でうわさになっていたから。事態の大きさを考えれば、そうなるだろう」。電通の男性中堅社員は28日、書類送検や石井直社長の引責辞任について冷めた口調で語った。
電通は長時間労働を防ごうと、10月から「午後10時以降の全館一斉消灯」を続ける。この社員は淡々と続けた。「今は繁忙期ではないのでそんなに自宅に仕事を持ち帰ってはいないけど、自宅からメールを送ったりはしている。『10時に帰れ』と言われても、仕事が減るわけじゃない」
別の30代の男性社員も、「今の会社の取り組みはある程度評価できるが、仕事を持ち帰る人が周りで増えている。会社はこうした抜け道をなくすことにも取り組んでほしい」と注文を付けた。
「忙しい部署でやってきたので、月の残業時間が100時間を超えて産業医面談を受けたこともある」。そう打ち明ける若手社員は「ウチは目立つ会社だし、見せ物になっているのかな。『働き方改革』と世の中が言うなかで、パフォーマンスの材料として扱われている気がする」と漏らす。「ずっと続けてきた働き方はすぐには変えられない。今は『反省しています。だから変えます』と言っているだけだ」(高野真吾、大内奏)