各国で広がった偽ニュースの例
ネット上にデマが飛び交った昨年の米大統領選。今年大きな選挙を控える欧州でも、「偽ニュース」の拡散を警戒する声が強まっている。各国で、新聞社や政府、ネット企業などが次々に対策を打ち出し始めた。
■信憑性判定ツール開発
仏ルモンド紙は2月にも、ブラウザーに導入すれば閲覧中のサイトの信頼性がわかるツールを発表する。偽ニュースのサイトは赤、ジャーナリズムの手続きに従っていると思われるものは緑、事実を題材にしたパロディーサイトは青など、信頼性の度合いが色で示される仕組みだ。
「あまりに(偽ニュースの)量が増えすぎた。記事で対応するだけではだめだと思った」。ネット上の情報や画像の真偽を検証する部門の責任者で記者のサミュエル・ロランさんは、ツールの開発を始めた理由をそう話す。
同紙は2009年から、ネット上の情報について検証チームが調査。今春に控える大統領選の候補者をめぐるうわさや画像の真偽などを日々、電子版で発表している。
15年11月、パリで130人が死亡する同時多発テロが発生した。直後、逃亡した容疑者の素性や行方をめぐり、全く関係ない人の名前や写真が出回るなど、ネット上もパニックに陥った。ネット利用者が情報に対して批判精神を持つために「何か手がかりが必要だ」と考え、今回のツールの開発が決まったという。
サイトの記事の内容や公にされている政治家の発言、統計データを自動的に関連づけて表示させることで、利用者が事実関係を検証できる仕組みの開発も進めている。ロランさんは「ルモンドのためというより、公共的なサービスとしてやっている。爆発的に増える偽情報と戦うための材料を提供する役割がジャーナリストにはある」と話す。(高久潤)