衆院本会議で代表質問に立つ民進党の野田佳彦幹事長。後方右端は安倍晋三首相=23日午後、岩下毅撮影
安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が23日午後、衆院本会議で始まった。トップバッターは民進党の野田佳彦幹事長だ。今国会の焦点とされる天皇陛下の退位をめぐる議論でカギを握る首相経験者が、首相に5年越しの「因縁」のテーマで論戦を挑んだ。
「陛下のお言葉を受けて、政府とりわけ官邸側と皇室側とはしっかり意思疎通ができているのか」
代表質問で、野田氏は首相にこう問いかけた。昨年8月の天皇陛下の異例のお気持ち表明に至った原因の一つを「政治家の不作為」と反省しているからだ。
野田氏は自身の首相時代の2011~12年、女性皇族が結婚後も皇族として残れるようにする「女性宮家」の創設を目指した。皇室の活動を安定的に維持するためだ。宮内庁幹部からも「火急の案件」と頼まれた。
反対したのが安倍氏だった。安倍氏は、女性宮家が女性・女系天皇の容認につながるとの立場から「歴史観と皇室への敬意を欠いた民主党に任せるわけには断じていかない」(文芸春秋12年2月号)と主張。野田氏は案をまとめられずに退陣し、安倍氏の手に政権が渡った。
陛下のお気持ち表明に対し、一代限りの退位とする特例法での決着を図ろうとする安倍内閣に対し、野田氏は皇室典範改正による恒久的な制度にすべきだと主張する。「陛下はご自身お一人限りのことを言っているわけではなく、皇位の安定的な継承を願いながら、国民に対して議論を望んでいる」と訴え、党内議論を主導してきた。
昨年末、漫画家の小林よしのり氏と対談した際には、「保守政治家」を自任する首相への対抗心ものぞかせた。「いま目立っている保守は本来の保守ではない。軌道修正していく役割を、穏健な保守の立場がやらなければならない」
野田氏に近い民進議員は「野田さんは首相時代から陛下と交流がある。だからこそ、陛下のお考えに沿わない特例法でやろうとする政府に強い不満をもっている」と解説する。
与野党の議席数に圧倒的な差があるなか、党内にも「いつまでも突っ張るような案件ではない。皇室問題を政争の具にはできない」との声がくすぶる。野田氏は「政争の具にしないことと議論しないことは同義ではない」と訴えた。(松井望美、南彰)