大きなハサミを持つ「シオマネキ」(2015年5月、千葉県木更津市、相澤敬吾さん提供)
西日本の暖かい海を中心に分布するカニの「シオマネキ」が東京湾の干潟に定着しているとする調査結果を、東北大の柚原剛(ゆはらたけし)・研究員と千葉県立木更津東高校の相澤敬吾教諭がまとめた。地球温暖化の影響とみられ、繁殖し始めている可能性が高いという。
シオマネキは、国内では主に伊豆半島から沖縄にかけて生息し、九州地方などでよく見られる。甲羅の幅は3・5センチほど。オスは大きく目立つハサミを持つ。
東京湾には分布しないと考えられていたが、2015年に千葉県木更津市の干潟で6匹を確認した。このうち5匹は甲羅の幅が3センチほどに成長しており、生まれて3年ほど経っているとみられた。この年の9月には、オスが大きなハサミを振り上げてメスを誘う繁殖行動も観察された。
相澤さんによると、16年夏には20匹以上確認した。
黒潮の流れに乗るなどして幼生が北上し、東京湾で成長したと考えられるという。東京湾の干潟では12年、シオマネキの近縁種で主に伊豆半島から種子島に分布する「ハクセンシオマネキ」も初めて見つかっている。かつては幼生が東京湾に流れ着いても、冬を越して生き続けるのは難しかった。
東北大の柚原さんは「温暖化に伴う冬場の気温や海水温の上昇によって、越冬を繰り返すことが可能になったのではないか」と話している。(山本智之)