パソコンを使ってドライバーの安全業務管理をする女性社員=愛知県瀬戸市、川津陽一撮影
日本の人口が減る中、主力の製造業が好調な愛知県では増加傾向が続く。だが、若い女性はどんどん首都圏に転出していることが、県の調査で明らかになった。職場環境が要因のひとつだ。
名古屋外国語大4年の井戸彩香さん(22)は、4月から東京都内の商社で働く。カナダに留学した経験を生かし、英語を使って海外とやりとりできる仕事に就くのが夢だった。
就職活動を始めた昨年は、生まれ育った名古屋の会社に入ろうと思った。しかし、名古屋周辺はメーカーや物流業界が主流で、希望とは違う気がした。会社説明会やHP上で女性社員の姿が見当たらない企業もあり、「女性が働くイメージがわきませんでした」。
就職する商社名は就活中に初めて知った。女性の離職率が低く定年まで働けそうな点が魅力的だった。井戸さんは「名古屋の人は地元に残りたがると言われるけど、私は東京でチャレンジしてみたい」と話す。
総務省の住民基本台帳の人口調査では、日本人の人口は2009年をピークに減り始めた。愛知県も年間の死亡数が出生数を上回るが、県外からの移住者が多く、増加が続く。
1月末に総務省が公表した人口移動報告で、愛知県は昨年1年間で10代後半と20代を中心に転入のほうが6265人多かった。ただ、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)との転出入は、愛知県からの転出が7149人多かった。
愛知県も同じ時期に同様の調査をしており、首都圏への転出超過は7399人。このうちほぼ半分が20代で、特に20代前半の女性が1327人と多かった。
県によると、県内の20~34歳は男性が女性より1割余り多い。トヨタ本社や関連企業のある豊田市と刈谷市の20~39歳は、男性が3割も多い。県産業労働政策課は「女性が去り続けると少子化が進みかねない。また、多様性を重視しない企業は活力を失う可能性がある」と心配する。