ホテル各室にテレビがあるのに受信料が支払われていないとして、NHKがビジネスホテルチェーン大手「東横イン」とグループ会社に計約19億3千万円の支払いを求めた訴訟の判決が29日、東京地裁であった。中吉徹郎裁判長はNHKの主張を大筋で認め、請求額とほぼ同額の支払いをホテル側に命じる判決を言い渡した。NHKによると、判決で支払いを命じた額としては過去最高という。
判決は、同グループの235のホテルにある約3万4千部屋について、受信料の支払い義務がある、と指摘。ホテル側は、これまで一定の割合の客室のみ受信料契約することでNHKと合意をしていた、と主張したが、判決は「放送法はNHKによる恣意(しい)的な契約免除を認めておらず、免除の合意が成立していたとは認められない」と判断し、ホテル側と契約が成立する14年までの2年間分の支払いを命じた。
東横イン側の代理人弁護士は「この判決の結論には到底承服しかねますので、控訴いたします」とコメントした。NHKは「NHKの主張がほぼ認められた判決と受け止めています」とコメントした。
受信料の支払いをめぐっては、NHKの不祥事が相次いで発覚したことをきっかけに支払い拒否が増加。NHKは受信料の公平な負担を図るとして06年から法的手段に乗り出した。11年からは未契約世帯への訴訟も始めた。最高裁は受信料契約を拒否した男性の訴訟について大法廷で審理することを決めており、放送法が憲法に違反していないか、受信料制度について初判断を示す。(塩入彩)