ソウルの青瓦台で11日、秘書官らと散歩する韓国の文在寅大統領(左から3人目)=ロイター
10日就任した韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が、弾劾(だんがい)・罷免(ひめん)された朴槿恵(パククネ)前大統領の政治スタイルを矢継ぎ早に塗り替えている。朴氏への批判の受け皿として当選したことに加え、約9年ぶりの革新系への政権交代を印象づける狙いがある。
特集:韓国大統領選挙
ワイシャツ姿の文大統領がコーヒーを手に、首席秘書官と肩を並べながら青瓦台の庭を散策する――。12日、韓国各紙はこんな写真を1面に掲載した。
10日に就任した文氏は、朴前政権では想像できなかった姿を打ち出し、韓国メディアを驚かせている。その一つが秘書官らとの関係を変えたことだ。
朴氏は最側近も近づけず、秘書官らとさえ意思疎通を欠く「不通(プルトン)」と呼ばれる対応を続けた。そうした「密室政治」が民間人のチェ・スンシル被告の国政介入を許す背景になったと指摘されている。
文氏は12日から、青瓦台の執務室ではなく秘書棟で仕事を始めた。大統領府は「大統領は参謀らと近い距離で常にコミュニケーションを望んでいる」と説明、秘書官らと議論しながら日常業務を行うとしている。同日昼には、史上初めて、青瓦台の技術職の公務員と一緒に昼食をとった。
さらにメディアを驚かせているのが、文氏が大統領の行動日程を公開し始めたことだ。死者・行方不明者約300人を出した旅客船セウォル号沈没事故では、朴氏の当日の行動がはっきりしない「空白の7時間」が厳しく問われた。「警護上の弱点が流出する危険性がある」(朝鮮日報)との指摘もあるが、おおむね好意的に受け止められている。