佐賀県唐津市の金塊密輸事件で、犯行の前後に海外に出国した中国人の男が事件前、「金塊は自分が引き取る」と仲間の容疑者に語っていたことが、捜査関係者への取材でわかった。第7管区海上保安本部(北九州市)などは、男が犯行グループの中国側の首謀者とみて、関税法違反(無許可輸入)容疑で逮捕状を取って行方を追っている。
密輸金塊、206キロすべて本物 容疑の船長ら8人告発
捜査関係者によれば、男は東京都墨田区の40代の中国人。金塊が陸揚げされた名護屋漁港(唐津市)での荷受け役だったとされる伊藤武容疑者(28)ら3容疑者と、事件前に行動を共にしていた。陸揚げ直前の5月31日も福岡市のホテルに滞在。伊藤容疑者ら3人はレンタカーで漁港に向かったが、男はホテルにとどまり、31日夕に韓国経由で中国に出国したという。
事件ではこの3人を含む日本人、中国人の計9人が逮捕された。このうち複数の容疑者は、男が事件前、「金塊は陸揚げした後、自分が引き取る」と話していたと供述。金塊をいったん男の手元に置き、その後に売りさばく計画だった可能性がある。
佐賀地検は22日、金塊を陸揚げした第36旭丸の船長、斎藤靖昭容疑者(49)ら日本人5人、中国人3人の計8人を同法違反の罪で起訴した。起訴状などによると、8人は日本側の主犯格とされる山崎竹助容疑者(66)=同法違反容疑で逮捕=と共謀し、5月30日、東シナ海の公海で国籍不明の船から金塊約206キロを受け取り、31日午後3時ごろ、名護屋漁港に無許可で陸揚げしたとされる。
地検は8人の認否を明らかにしていない。捜査関係者によると、容疑者らは山崎容疑者が日本側の犯行の指示役だったとも供述しているという。山崎容疑者は中国人の男との関係について「船を売る交渉をしていただけ」と話し、容疑を否認しているという。