藤井聡太四段=2016年12月、名古屋市中区
将棋の中学生棋士、藤井聡太四段(14)が公式戦29連勝をかけて26日、竜王戦決勝トーナメント1回戦で増田康宏四段(19)と東京将棋会館で対局する。幼いころから手を合わせてきた先輩たちが歴代最多連勝記録の更新を見守っている。
藤井四段、強さの理由 羽生三冠「光速の寄せと重なる」
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「なんでそこに指したんだ!」。当時小学2年の藤井四段の声が、地元の愛知県瀬戸市にある将棋教室に響いた。小学6年だった小林和貴さん(19)=愛知県尾張旭市=がパソコンのオンライン対局中にミスをすると、後ろで見ていた藤井四段が怒ったという。「僕よりずっとミスを悔しがっていた。昔から将棋に対する情熱がすごかった」
小林さんは藤井四段とともに「ふみもと子供将棋教室」に通った先輩で、全国小学生倉敷王将戦の県予選で2度優勝した。教室の文本力雄さん(62)は「和貴は聡太の憧れだった。対局しながら聡太を育てた」。
藤井四段が教室に通い始めたのは5歳の冬。当時小学3年だった小林さんは「最初は憧れてくれたのかも。でもすぐに追いつかれた」と話す。毎月生徒同士の昇級戦があり、藤井四段は1年間で飛び級を重ね、20級から4級まで昇級。その強さで周囲を驚かせた。
一方で子どもらしいエピソードも。小林さんは「練習後にプロレスで遊ぶと、聡太は年上の自分に果敢に挑んでは投げ飛ばされていた」と懐かしそうに語る。
教室では幾度となく対局した2人だが、公式戦での対局は一度きり。2010年2月に名古屋市であった第35回小学生将棋名人戦の県予選。小学5年の小林さんが序盤こそリードしたが、終盤に小学1年の藤井四段が巻き返し逆転負けした。「本当に悔しくて大泣きしました」と小林さん。
「聡太は自分より努力していたのだと思う。上を目指す強い思いがあった」。時の人となった後輩に対する願いはシンプルだ。「将棋教室では皆楽しく将棋をしていた。これからも聡太にはあのころのように将棋を楽しんでほしい」
「いつか、聡太君と対局したい…