冠水した国道386号を車が渡っていた=5日午後5時47分、福岡県朝倉市烏集院、福岡亜純撮影
気象庁が特別警報を出した福岡、大分両県の各地では、午後から猛烈な雨が降り続け、多くの住民が避難。「怖かった」「命からがら逃げた」と緊迫した状況を語った。
1時間に観測史上最高となる129・5ミリの雨を観測した福岡県朝倉市は、市内のあちこちで道路が冠水。田んぼと道路との区別がつかなくなり、あふれた雨水が濁流となっている場所もあった。
同市の県立朝倉光陽高校には、多くの住民らが避難してきた。避難所にたどり着けずに、周囲より土地が高いこの高校に続々と住民らが集まったという。学校は会議室を開放。午後8時現在で50人以上が避難した。
看護師の渋谷菜穂子さん(56)は夫の博之さん(63)とともに車で避難してきた。外出先から同県飯塚市の自宅に戻る途中の朝倉市内で道路が冠水し、車はライトのあたりまで水につかったという。「道路には冷蔵庫やドラム缶などいろんなものが流れていた。アクセルをめいっぱい踏んでも車は進まず、エンジンが止まってしまうのではと、とても怖かった」と振り返った。
朝倉市の朝倉地域生涯学習センターには午後9時現在、60世帯114人が避難。家族や友人らに電話をかけ、無事を確認して目に涙を浮かべる人や、サイレンや雷の音がするたびに顔をあげて不安な表情を浮かべる人もいた。
田中さとみさん(56)は、平屋建ての自宅で、家財道具をこたつの上にあげていると、水が床上まであっという間に上がってきたという。「命からがら逃げてきた。これまで生きてきて、こんな災害は初めて」と話した。
大分県日田市大肥では大肥川が氾濫(はんらん)した。そこから数百メートル西の大鶴地区に住む穴井和則さん(69)は「家の前の道路がまるで川みたい。こんな大雨、生まれてから経験したことない」と話す。2012年7月の九州北部豪雨でも自宅前の道路は水浸しになった。しかし「水量と勢いが5年前の比じゃない」。避難指示が出たが、自宅から出ることができない状態だという。