北朝鮮の戦略軍司令部を訪れた金正恩氏(中央)。15日付の労働新聞(電子版)が伝えた。地図には「戦略軍火力打撃計画」とある=同紙HPから
北朝鮮は15日付の労働新聞(電子版)に掲載した写真を通じ、新型中距離弾道ミサイル「火星(ファソン)12」4発によるグアム島周辺への射撃について、詳しく紹介した。日米韓による迎撃を容易にしかねない行為だが、北朝鮮が得意とする日米韓を混乱させる心理戦の一環とみられる。
労働新聞は、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が弾道ミサイルを担当する戦略軍司令部で指導する姿を公開。写真には、朝鮮半島からグアムに延びる直線が引かれた「戦略軍火力打撃計画」という図が写っていた。
北朝鮮は10日に火星12の詳しい飛行時間と射程も公表しており、15日に公開した地図にひかれた軌道と一致した。軌道は、東岸の咸鏡南道新浦(ハムギョンナムドシンポ)付近からグアム島周辺に延びていた。地図の右下には4発の落下地点の緯度経度とみられる数字が並んでいた。
また、壁には「作戦地帯」と書かれた韓国や日本の地図も掲げられていた。韓国に4本、日本に2本の線がそれぞれ引かれ、右側には判読不明の表が並んでいた。グアムのアンダーソン米空軍基地の航空写真もあった。韓国・慶南大学の金東葉(キムドンヨプ)博士は「線は長距離砲や弾道ミサイルの射程、表は主要な攻撃目標ではないか」と語る。
軍事関係筋によれば、火星12を迎撃する場合、事前に軌道がわかっていれば、迎撃ミサイル「SM3」を搭載するイージス艦を効果的に配備できる。
なぜ、北朝鮮が迎撃の確率が高まる行為をわざわざ取ったのか。金博士は「米国に対し、発射が戦争行為ではないと示唆して危機を避けたいのかもしれない」と語った。日韓の表については、具体的な脅威を示して日米韓の足並みを乱す狙いがあるとみられる。(ソウル=牧野愛博)