グラウンドを去る秀岳館の鍛治舎監督=細川卓撮影
(17日、高校野球 広陵6―1秀岳館)
甲子園は「また帰って来たい場所」 秀岳館・鍛治舎巧監督の一問一答
選手たちとともに、秀岳館の鍛治舎(かじしゃ)巧監督の挑戦が終わった。大会前にこの夏限りでの退任を表明し、就任3年間の集大成として日本一を目指して臨んだ甲子園。「広陵の中村君をいかに抑えるかでしたが、本塁打を含めて3安打を打たれては。完敗です。選手たちは本当によくやりました」
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日本一を強く、厳しく追い求めた。1日8時間の練習で素質のある選手を鍛え上げた。全国トップレベルの投手を念頭に、どう打ち崩すかを研究させ、バットを振らせた。それに選手はついてきてくれた。2016年春から3季連続の甲子園で、いずれも4強にまで進出した。
この夏はその壁を打ち破れるかだったが――。笑顔の中にも、ときおり悔しさをにじませる。日本一になるのに何が足りなかったか? こんな質問に「教えてほしい。やりきった感がありますから」。さらに言った。「3回のベスト4を足しても、1位になりませんものね」
14年就任。大阪で率いていたボーイズリーグのチームの出身選手を起用してのチーム作りに、反感も買った。だが、まだ夏の全国優勝経験のない熊本の野球に刺激を与えたいと考えていた。
「1年目は、(熊本の)藤崎台球場で大阪に帰れとの声を聞いた。批判は仕方ないです。いつかは分かってくれると思っていた」。選抜で4強入りしたあたりから変化を感じた。「周囲が『おめでとうございます』から『惜しかったですね』に変わっていきましたからね。(野球に対する)次元が上がったと思った」
今年の地方大会では2試合で140キロを投げる投手と対戦し、熊本の野球のレベルアップを感じた。「秀岳館に勝てれば甲子園に行ける、というふうになった。皆さんがんばってやっている。夏に優勝する日も近いと思う」。秀岳館の新入生も、今年は大半が九州出身者になったという。
長くNHKで甲子園中継の解説者をしながら、いつかは自分もグラウンドでと思っていた。「夢のような3年間でした」。今後の身の振り方はまだ白紙だが、試合後、広陵の校歌を聞きながら、満員の観客、空の雲が目に入った。「甲子園は、また帰ってきたい場所でもあります」(隈部康弘)