広陵―仙台育英 先発で力投する広陵の山本=加藤諒撮影
(20日、高校野球 広陵10―4仙台育英)
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広陵には頼もしい背番号「10」がいた。左腕の山本だ。
疲れが見え始める準々決勝。上を見据える意味でも、エースの消耗をどこまで抑えられるかが鍵になる。広陵、仙台育英ともに先発したのはエースではない投手。その出来が明暗を分けた。
一回、広陵は仙台育英の佐川から3点先制した。山本は「先攻は好き。味方の攻撃を見て勇気をもらえる」と落ち着いていた。直球は130キロ前後でも、制球に絶対の自信を持つ。三回、先頭に二塁打を浴びたが丁寧に投げ、犠飛の1点にとどめる。2死後、4番長谷川をスライダーで見逃し三振。6回途中2失点で主導権を引き寄せた。
山本は新チームになってから投手になった。「打者で結果が出なくて、中井監督が生きる道をくれた」。速球派の平元と違うタイプを目指し、制球を磨いた。1、2回戦で救援し、3回戦は五回途中から最後まで無安打に抑えた。
九回、相手の猛攻を受ける。2年生右腕の森が3連打で2点を失うと、山本は再び登板した。「相手は大阪桐蔭に逆転サヨナラ勝ちした。何が起こるか分からない気持ち悪さがあった」と中井監督。降板後の山本に一塁を守らせ、残しておいた。スタンドから仙台育英の大声援が響くなか、技巧派左腕はここでも冷静な投球で相手の勢いを断った。
山本は常々「銀次郎(平元)の方がレベルは上」と話す。そんな謙虚な「10」が、チームを10年ぶりの夏4強に導いた。(坂名信行)