候補者の演説を聴く人たち=10日午前、堺市堺区、内田光撮影
10日に告示された堺市長選は、4年前の前回選挙に続いて、大阪維新の会の新顔と現職市長の一騎打ちとなった。党是の大阪都構想を封印して「現市政の是非」を争点に掲げる維新に対し、「都構想反対」を前面に打ち出す現職。政党も維新と反維新に分かれ、激しい選挙戦が始まった。
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「今の市政は堺の可能性を生かせていない。古い行政を見直し、成長につなげる」。10日朝、南海堺東駅前で第一声を上げた永藤英機(ひでき)氏は、駅前の活性化や外国人観光客の誘致に触れた約10分の演説の中に現職批判を盛り込んだ。
永藤氏は「停滞か、成長か」をスローガンに掲げ、竹山市政8年間の実績を主な争点に据える。4年前に維新が掲げた大阪都構想は封印し、維新支持層とともに現職への批判票の取り込みを狙う。地元選出の馬場伸幸衆院議員は「現職への不満を、『永藤にやらせてみよう』という声に変えるのが課題だ」と説明する。
第一声を聴いた北区の会社員男性(49)は「大阪、関西全体が発展してほしい。そのために、今は維新だと思う」と期待する。一方、30代の主婦は「維新は公約をどれだけ実行できるのか。どちらが本気でやってくれそうか、時間をかけて考えたい」と話す。
一方の竹山修身(おさみ)氏。「しっかり都構想の議論をしましょうよ。それが看板政策でしょ」。街頭などで反都構想の訴えに時間を割いた。
維新が「争点にならない」と否定しても都構想にこだわるのは、反都構想が反維新の象徴だからだ。維新の代表だった橋下徹氏が先頭に立った4年前の市長選で、「堺はひとつ」を合言葉に勝利した体験が竹山氏側にはある。自民府議は「4年前のように都構想で批判していくのが一番効果的」と話す。陣営は告示前に「都構想NO!」と大きく書いたポスターを貼り、一大争点にする構えだ。
竹山氏の演説を聴いた男性会社員(52)は「堺は昔から自主独立を貫いてきた。大阪市や大阪府に巻き込まれて、壊して欲しくない」と語った。一方、「都構想の話に終始した。もう少し、具体的な政策や課題の話が聞きたかった」と話す主婦(51)もいた。
■「水と油」、維新は相乗り批判
「共産党と自民党。まさに水と油が一つになって堺を守れと言っている」。維新の松井一郎代表は10日、堺市堺区での街頭演説で竹山氏陣営の各党相乗りを激しく批判した。
維新は松井氏自らが選挙対策本部長に就任。約180人の維新所属の国会議員や地方議員らが市内7区ごとにチームを編成し、「総動員体制」で選挙戦に臨む。とりわけ力を入れるのは相乗り批判で、「既成政党による野合談合」と主張。自民支持層や、共産と対立する公明党の支持者に訴えかける方針だ。
竹山氏陣営は、自民や民進、労働組合などの組織戦で「維新包囲網」を敷く。
10日の竹山氏の出発式。「安倍晋三総裁の推薦書がある」。自民府連の中山泰秀会長は、維新と近いとされる安倍首相の名前を持ちだして強調した。自民は今回、前回選の「支持」から「推薦」に格上げ。堺市外の議員にビラ配りまで呼びかける力の入れようだ。民進も自民と割り振り、議員らが駅頭に立つ。共産は表舞台に立たないが、加盟する市民団体が維新批判などの日刊のビラを市内全駅で配布している。