大阪都構想 今後想定される流れ
大阪市の姿は変わるのか、変わらないのか。「大阪都構想」などについて議論している大阪府と大阪市の法定協議会が22日にあり、選択肢が絞られた。このまま議論が進み、今秋に住民投票が実施されることになれば、「4区の特別区」か「8区の総合区」の二者択一になりそうだ。
特集:「橋下政治」10年
都構想の住民投票「今はやらない方が」 橋下氏が慎重論
4区案、大阪維新の会が提案
法定協は府知事と大阪市長、府・市の議員で構成する。大阪市を廃止して東京23区のような特別区に再編する都構想については、特別区を4区か6区にする「区割り案」が昨年9月に事務局から示されていた。
この日の法定協では、大阪維新の会が4区案に絞り込んで議論を進めることを提案。自民党、共産党からは都構想そのものに対する反対意見などがあったが、今井豊会長が議論を引き取り、今後は4区案で区の名前や区議の定数などを検討することになった。
法定協では特別区案と並行して、大阪市を残したまま現行の24区を8区にして区の権限を強める「8総合区案」も議論されている。推しているのは公明党だ。
「8総合区案」は公明に配慮
維新は府・市議会で最大会派だが、過半数には満たず、公明の協力を得て府政・市政運営をしている。維新は今秋、都構想の是非を問う住民投票の実施をめざしているが、公明の賛成がなければ不可能だ。そこで、公明が主張する「8総合区案」も法定協で議論することに同意した。
維新の構想では、今年9~10月に大阪市民を対象にした住民投票を実施し、賛成多数なら「4特別区」に再編する。反対多数なら、公明が主張する「8総合区」にする。そうした基本方針を住民投票前に市議会で議決したい考えだ。
自民市議団幹部は「8区ありきではない」と述べるが、自民は総合区の導入には賛成しており、住民投票が実現しなくても総合区の議論は続きそうだ。共産市議団幹部は「住民投票は断念するべきだ」と批判する。
2015年5月の住民投票で否決された前回の都構想案では、4種類あった区割り案の絞り込みでつまずいた。14年1月の法定協で公明が反対に回り、絞り込みが否決されたためだ。維新代表だった橋下徹氏は「宗教の前に人の道がある」と批判した。
行き詰まった維新は公明に圧力をかけるため、維新代表だった橋下徹氏が衆院選で公明の現職がいる選挙区に立候補しようと準備を進めた。14年12月の衆院選で橋下氏が出馬を見送った後、公明は住民投票の実施賛成に転じた。
そんな前回とは打って変わって、今回の法定協は静かに議論が進んでいる。
「盛り上げないのも作戦のうち」
都構想に反対する自民のある市議は「法定協を盛り上げないのも作戦のうち。わざわざ議論する必要はない」と話す。維新も議論が盛り上がらない現状に焦りを募らせる。15日に維新の市議や府議らが集まった会合では、市議の1人が注目度の低さを指摘し、「今やったら負ける」と住民投票の先送りを主張した。
ただ、水面下での動きは活発になっている。
15日夜、自民と公明の市議・府議10人余りが大阪市内のホテルでひそかに会食した。出席者によると、会合の冒頭で自民側は「法定協で(都構想案を)否決したい」と伝えた。それに対して公明側から明確な返答はなかったという。
都構想には「反対」との立場を鮮明にしている公明が、前回と違って区割り案の絞り込みに反対しなかったのは、「総合区」という対案があるからだ。公明市議団の土岐恭生幹事長は「(都構想案の)具体の中身が分かった方が、より深掘りの議論ができる。総合区が有利であることが一段と鮮明になる」と話す。
前回の大阪都構想案を巡る動き
13年2月 法定協が初会合
法定協で4種類の区割り案提示
14年1月 法定協で区割り案の絞り込み否決
2月 橋下市長が辞職・出直し選挙へ
7月 維新のみの法定協で都構想案可決
10月 府・市議会で都構想案否決
12月 衆院選。維新は公明の選挙区に候補を立てず
15年1月 公明が賛成に回り、法定協で可決
3月 公明が賛成に回り、府・市議会で可決
5月 住民投票で否決