清水宏保の目
2018年平昌オリンピック
スピードスケートの平昌五輪代表選考会女子500メートルの神谷衣理那(えりな、高堂建設)の滑りを見て、うるっときた。よくぞ、戻ってきたな、と。
4年前、神谷はソチ五輪選考会で500メートルで3位になりながら、ほかの距離との兼ね合いで代表になれなかった。発表の場から、泣き崩れて姿を消した。
あれから4年。トラウマのあるレースに挑むにあたり、ストレスがかかっていたことだろう。本人も「いろいろな心境だった」と話していた。そんな中で、今持っている力を出し切って、3位。同じ順位でも、今回は出場が確実だ。
ソチの時、神谷に勝って五輪に行ったのが辻麻希(開西病院)で、今回は神谷が辻に勝った。五輪の枠を巡る争いは、残酷だ。でも、だからこそ人の心を打つとも言える。
そして、忘れてはいけないのが、この4年の間にできたナショナルチームの存在だ。神谷のような選手が一線で続けられたのも、サポートをしてくれる人がいたからだ。
さきほど、「今の力を出し切った」と書いたが、あくまでも「重圧」という、「おもり」を背負ってのレースとして、だ。このプレッシャーから解放されたとき、さらなる力を発揮できるはずだ。
今日の段階では、1位の小平奈緒(相沢病院)、2位の郷亜里砂(イヨテツク)に差をつけられた。小平は絶対的金メダル候補であり、郷もメダルを十分に狙える位置にいる。これから1カ月、身近にいる2人を標的にすれば、神谷にもメダルが見えてくる。(長野五輪金メダリスト)