免疫細胞の攻撃力を遺伝子操作で高めるがんの免疫療法「CAR(カー)―T(ティー)細胞療法」について、肺がんなど固形がんの治療に効果を示す新手法を山口大学の玉田耕治教授らの研究チームが開発した。がん細胞をマウスに移植して確かめた。5日付の米科学誌ネイチャーバイオテクノロジー電子版に発表した。
CAR―T細胞療法は、患者から取り出した免疫細胞を遺伝子操作してがんを攻撃する力を高めて再び体内に戻す治療法。これまで急性リンパ性白血病など血液がんの治療で米国などで承認されている。だが、固形がんでは効果はまだ確立されていない。
玉田教授らは、T細胞という免疫細胞にがんの表面にある特定のたんぱく質にくっつく分子と、T細胞を活性化させる「インターロイキン(IL)7」と、「CCL19」という二つの生理活性物質を遺伝子操作して導入した。
肺がんなどの細胞を移植したマウスに、CAR―T細胞療法をしたところ、ほぼすべてでがんが消失し生存期間が4カ月以上だった。血液がんの治療に使われる従来のCAR―T細胞療法では大半の生存期間が約2カ月以内だった。
再びマウスにがん細胞を移植しても増殖しなかったほか、遺伝子導入した免疫細胞だけでなく、もともとマウスの体内にあった免疫細胞も活性化したという。
玉田教授は「固形がんでこれほど効果が出たのは他に例がないのではないか。2年以内に臨床研究につなげたい」と話している。(服部尚)