秘仏毘沙門天立像=京都市上京区、佐藤慈子撮影
京都の寺社など19カ所が参加する春の「京都非公開文化財特別公開」(京都古文化保存協会など主催、朝日新聞社特別協力)が、27日始まった。京都市上京区の相国寺の塔頭(たっちゅう)である養源院(ようげんいん)では、秘仏の毘沙門天立像が開帳される。
毘沙門天立像は、鎌倉時代の慶派の仏師が手がけた高さ約170センチの寄木造(よせぎづくり)。左手に宝塔ではなく、戟(げき)という武器を持つのは珍しい。相国寺の記録では、長らく忘れられていたが、江戸時代中期の1763年に見つけ出され、伊藤若冲(じゃくちゅう、1716~1800)が奉納した「釈迦三尊像」や「動植綵絵(どうしょくさいえ)」とともに公開され、評判を呼んだ。平塚景堂(けいどう)・養源院住職は「当然、若冲もこの毘沙門天立像を見たはずです」と話す。
像は大坂の富くじの販売所にも貸し出されたが、その後は秘仏となり、2007年に相国寺承天閣(じょうてんかく)美術館で開かれた若冲展で出展されて以後、毎年1月に一日だけ開帳されてきた。
養源院は150年前の戊辰戦争で薩摩藩の野戦病院となっており、藩士らが柱につけた刀傷も見ることができる。日本初の麻酔を使った外科手術も行われ、西郷隆盛の弟の従道(つぐみち)も一命をとりとめたとされる。
特別公開は5月6日まで。1カ所あたり大人800円、中高生400円(料金は一部異なる)。問い合わせは京都古文化保存協会(075・754・0120)。(久保智祥)