「はにコット」を企画した牧梨恵さん。手にしている服は自身のデザイン=大阪府高槻市
ここ数年、世は古墳ブームなのだとか。クッション、ケーキ、コンニャク……。古墳がグッズや食べ物に変身し、1日で3万人近くの古墳ファンが集うイベントもある。大阪大で考古学を専攻する学生が分析すると中心は20~40代の女性で、古墳の「カワイサ」を共有するSNSの発達が要因の一つらしい。
大阪府高槻市郊外。アクセサリー作家の牧梨恵(まきりえ)さん(37)は越してきた家の前に今城塚(いましろづか)古墳があり、幼い娘の遊び場になった。
「大王墓が目の前にあって古墳時代の人と同じ景色を見られる。前方後円墳のくびれもカワイイ」と牧さん。地元の人にもっと魅力を知ってほしいと、知人の主婦ら10人で2012年に古墳の周りの芝生広場などでクッキーやTシャツ、ペンダント、財布などを販売するイベント「はにコット」を始めた。
出店の条件は古墳や埴輪(はにわ)グッズを作ること。「手作り作品がSNSに発信されて女性の目に留まり、『古墳カワイイ』という人がどんどん増えた」。1日3千人だった参加者は15年に2万人を超え、7回目の昨年は約2万8千人になった。
古墳グッズは各地にある。代表例は奈良市でイスの張り替え工房を営む福徳有男(ふくとくくにお)さん(57)が製作した古墳クッションだ。13年にネットなどで販売すると注文が殺到し、半年待ちになることもあった。
同市の洋菓子店「プティ・マルシェ」の古墳形ケーキも根強い人気だ。「古墳とケーキは構造が似ている」と思っていたオーナーの中島智加さん(46)がチョコクリームをベースに、抹茶のスポンジで木々を表現。古墳好きの知人の開店祝いにプレゼントしたのをきっかけに、13年に店頭で販売を始めた。
古墳群の世界文化遺産登録を目指す大阪南部の堺・藤井寺・羽曳野の3市では古墳グッズ作りが活発だ。応神陵(おうじんりょう)古墳がある羽曳野市で生まれ育った会社員の森緑(もりみどり)さんは「24時間古墳といっしょに」との思いで、16年にネイルシールを作った。堺市では若手経営者が古墳の形のチャーハンやコンニャクを売り出した。
グッズだけではない。奈良県明日香村のキトラ古墳は13年に初めて石室が一般公開され、定員3600人に1万6千人余りの応募があった。堺観光ボランティア協会によると、17年に国内最大の仁徳陵(にんとくりょう)古墳(大山古墳)前でガイドをした観光客は、前年比約7千人増の約3万6千人。川上浩理事長(71)は「熱心に説明を聞く女性が増えています」。
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