トルコ・イスタンブールで25日、選挙結果に抗議の声を上げる人たち=ロイター トルコ大統領選で現職のエルドアン大統領(64)が再選された。シリア内戦への介入をはじめ欧米との関係はぎくしゃくしたままで、通貨下落による物価の高騰が国内経済を直撃している。内憂外患にエルドアン氏はどう対応するのか。その強権ぶりの行方とも絡み、注目が集まる。(ワシントン=杉山正、イスタンブール=北川学、ロンドン=寺西和男) 欧米とぎくしゃく 「選挙の結果、トルコはすべてのテロ組織と戦うことを選んだ。シリアの土地の解放を続け、ゲスト(シリア難民)に安全な帰り道を用意する」。エルドアン氏は25日未明、首都アンカラでの勝利演説でこう述べ、今後も隣国の内戦に介入する意向を示した。 トルコは、2011年に本格化したシリア内戦で反体制派を支援。アサド政権の打倒を掲げた。しかし、少数民族クルド人の武装組織「人民防衛隊」(YPG)がシリア北部で勢力圏を広げると、それを排除することに主眼を置き始めた。トルコはYPGを「テロ組織」とみなしている。 ところが、米国にとってYPGは、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を遂行するうえで重要なパートナー。米軍はシリアに地上部隊を送る代わりに、YPGなどを軍事支援する。 トルコ軍は今年1月からYPGが支配していたシリア北部アフリンで越境軍事作戦を展開。これを受け、米国は一部でYPG撤退への協力を始めたが、トルコは別の地域でもYPG排除を進める方針で、米国との溝が深まる可能性もある。 トルコは欧州との関係もぎくしゃくしている。エルドアン政権がメディア規制を強めているためだ。 ロシアに接近 欧米との関係を悪化させたトルコはロシアに接近。最新鋭の地対空ミサイルシステムを購入する契約に合意し、さらに反発を招いた。トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国だが、エルドアン氏が方針を変えなければNATO内で孤立する可能性がある。トルコと米欧間にくさびを打ち込みたいロシアの思惑に、はまることになりかねない。 「今年になって売り上げが4割減った。今後どうなるか見当もつかない」。1千店超の中古車販売店が集まるイスタンブールの貿易センターで、欧州からの輸入中古車を扱うニハット・デリさん(32)は嘆いた。 仏ルノー製の乗用車は6万1千リラ(約140万円)。性能にもよるが、昨夏と比べて1・5倍になった。昨年の経済成長率は7・4%と高い成長が続くが、新興国の通貨が軒並み下落するなか、今年に入り通貨トルコリラも急落。輸入品が値上がりしている。 経済の先行きに不安 25日の外国為替市場では、選挙結果を受けてリラが米ドルに対して買われた後、再び売られるなど激しい値動きになった。与党が共闘する政党と議会で過半数を握り、安定した政権運営ができるとの見方が出た一方、経済への先行きへの懸念も根強いためだ。 リラの水準は、年初より2割ほど安い。トルコ中央銀行は、物価上昇に拍車がかからないよう利上げを進める。しかし、利上げを嫌うエルドアン氏は5月、再選されれば、政治から独立して運営される中央銀行の政策に介入する考えを示唆。実際に強硬姿勢を取ればリラがさらに下落する可能性が高く、市場関係者は警戒している。 トルコは欧州に地理的に近く、輸出拠点にするためトヨタ自動車やホンダなどの自動車メーカーが進出。ただ、国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、17年の海外からの直接投資は約108億ドル(約1兆2千億円)と2年連続で減少。16年にクーデター未遂事件が起きるなど情勢の不透明さが響いている。経済を成長軌道に乗せるには、投資を促す環境づくりも課題となる。 ◇ 日本貿易振興機構アジア経済研究所の今井宏平研究員(トルコ地域研究) エルドアン氏は決選投票に進むと苦戦する可能性があったので、1回目の投票で大統領に選出されたかったはずだ。過去15年の政権運営と低・中所得者層に手厚い政策が支持され、選挙で協力し、大統領候補を立てなかった民族主義者行動党(MHP)の支持者の票も得て再選を果たした。 総選挙では、エルドアン氏率いる公正発展党(AKP)は単独過半数を維持できず、国会ではMHPの支援が必要不可欠となった。 ただ、現職大統領が再任されたので、内政・外交ともに大きな変化はないだろう。政権がクーデター未遂事件の首謀者と主張する在米のイスラム教指導者ギュレン師とその信奉者や、少数民族クルド人の非合法武装組織「クルディスタン労働者党」(PKK)については、AKPもMHPも脅威とみており、引き続き厳しい対応をとるだろう。 一方、悪化している経済状況の回復は見通せない。近年、エルドアン氏とAKPの政策を支持するか否かで国民の分断が深まっているが、今回の選挙を経てその傾向はさらに強まった感じだ。経済を立て直し、国民の亀裂を修復させることが、再スタートを切ったトルコの喫緊の課題だ。(聞き手・渡辺丘) |
トルコ大統領再選、経済回復に暗雲 かつて中銀介入示唆
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