全日本種目別選手権の事前会見で、ブレットシュナイダーへの挑戦を明言する内村航平
体操男子のエース内村航平(リンガーハット)がこの週末、鉄棒で大技に挑戦する。H難度のブレットシュナイダー(コバチ2回ひねり)だ。長年研究し、練習してきた技をついに試合で披露する。
全日本種目別選手権(30日開幕)に向けた公式記者会見があった28日、内村は大技への思いを口にした。「決勝(7月1日)ではやる予定です。美しく出来る自信はあるし、どの選手よりも高さもあると思う。違いを見せたいなという思いはあります」
今季、大技に挑む気持ちはずっとあったが、世界選手権の代表争いがかかった4月の全日本個人総合選手権、5月のNHK杯では封印した。NHK杯優勝で世界選手権への切符をつかみ、いわばノープレッシャーで臨める今大会で挑戦することを決断した。
ブレットシュナイダーは、この技を試合で初めて成功させたドイツ人選手の名前からつけられた。コバチ(後方抱え込み2回宙返り)にひねりを1回加えたのがコールマンで、さらに1回ひねりを加える。ちなみにコバチはハンガリー、コールマンはスロベニアの体操選手だ。
内村にとってこの技は「(ブレットシュナイダーの)名前がつく前からずっとやりたかった」と思い入れが強い。練習では長年挑んできたが、確実に成功できるとの確信がないと試合では新しい技を披露しないのがこれまでの内村の美学だった。「まだ成功率は100%ではない」と言いながら、28日の公式練習ではきれいにバーをつかんだ。「人に見られていると、やってやろうという感覚が出てくるし、試合になると、失敗したら格好悪いなという気持ちも出てくると思う。自分の『見せたい精神』にかけています」とにやり。
元々鉄棒は得意だが、この大技が入れば、難度点(価値点)は6・7まで上がる。内村はさらに東京五輪を見据え、難度点を7・2まで上げることを視野に入れている。そうなればまさに「鬼に金棒、内村に鉄棒」だ。ブレットシュナイダーについては「東京五輪や世界選手権の団体や個人総合の決勝では鉄棒が最終種目になる可能性が高い。そこで勝負をかけるために持っておきたい一つの技」と位置づける。30日の予選では封印し、1日の決勝で一発勝負に挑む。(平井隆介)