高校野球の神奈川大会は29日、南大会の決勝戦が横浜スタジアムであった。初優勝を目指して追いすがる鎌倉学園を、横浜が7―3で振り切って、3年連続18回目の夏の甲子園出場を決めた。同校の3年連続出場は初。30日は北大会の決勝が同スタジアムであり、慶応と桐光学園が対戦する。
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「ベンチ外」バネに奮起 万波中正選手
2―0で迎えた三回表無死二塁、横浜の4番万波中正選手(3年)は初球の低めの変化球を振り抜いた。「行ったな」。打球は左翼席上段へ。球場は大歓声に包まれた。
万波選手は一塁を回り、右手を高く上げた。「今大会で一番良い感触でした」
鎌倉学園とはこのチームで3度目の対戦。昨秋の県大会はコールド負け。4番で4打数無安打だった。春はコールドで勝ったが、自身は最終回に守備で出場しただけ。今大会の鎌倉学園戦にかける思いは誰よりも強かった。
1年の夏の大会で特大本塁打を放ち、注目を集めた。昨夏は背番号「9」で中軸に座るも、決勝戦は5三振。新チームでも調子が上がらない時期が続いた。
1月末、レギュラーが入る寮を出された。春の大会では打順が下がり、「結果が出ていないから当然」(平田徹監督)とスタメンからも外れた。
今大会前の一次登録はベンチ外。平田監督は「自分を見つめ直してほしい」との思いだった。
「今のはどうかな?」。仲間らの助言を得ながら、フォームを試行錯誤した。重心を低く構え、豪快さを保ちながらスイングがコンパクトになった。高めのボール球につられなくなった。
「初心に帰ろう」と、朝の練習で誰よりも早くグラウンドに入り、最後まで片付けをした。大会直前の登録選手変更で、背番号「13」を手にした。
今大会は計6試合で2本塁打を含む13本の安打で、チームトップの12打点をあげた。4回戦から4番に座った。斉藤大輝主将は「万波は4番としてだけでなく、チームを引っ張る声を出してくれて、助けられた」。
昨夏の甲子園は1回戦負け。「ここに戻ってくる」と、土は持ち帰らなかった。「去年、悔しい思いをした。絶対にやってやる」。全国優勝に欠かせない選手が、大会を通して復活を遂げた。(神宮司実玲)