神奈川大会は30日、北大会の決勝戦が横浜スタジアムであった。慶応が桐光学園を破り、10年ぶり18回目の夏の甲子園出場を決めた。桐光学園は6年ぶり5回目の夏の甲子園出場を目指したが、かなわなかった。8日に開幕した計186チームの熱戦が終わった。慶応は南神奈川代表の横浜とともに、8月5日から兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる全国選手権大会に出場する。
甲子園の全試合をライブ中継! 「バーチャル高校野球」
夏の甲子園、歴代最高の試合は? 投票ベストゲーム
(30日、高校野球北神奈川大会決勝 慶応7-5桐光学園)
3年生でようやくつかんだ優勝に、歓喜の涙があふれた。
一回表2死、慶応の下山悠介主将(3年)は、フルカウントから高めの直球をはじき返し初安打。勢いに乗ったチームは内野安打と敵失の間に先制点を奪い、下山主将が本塁を踏んだ。
「三者凡退は相手が勢いづくから」と、2死や2ストライクなど、追い込まれてからの粘りの攻撃を、練習では繰り返した。四回の内野安打も、八回に選んだ四球も、フルカウントから一球を見極めた結果だった。
下山主将は、1年生から夏の大会に出場。この時は決勝で横浜に敗れ、歓喜の輪を作る相手選手たちを、ただ見つめた。
昨夏は準々決勝で、桐光学園と対戦。九回に一ゴロで最後の打者となり、敗退した。「自分の打席で先輩の代を終わらせて、あんなに悔しいことはない」
新チームからは主将を担い、秋季関東大会で4強入り。春の選抜大会にも出場した。だが、桐光学園との再戦の機会を得た春の県大会は準々決勝で逆転負けを喫し、県で優勝できない難しさを感じた。
この試合の翌日、部員で5時間を超えるミーティングを開いた。「選抜も、県大会も、本当に自信を持ってグラウンドに立てていたのか?」「もっと全力でやれるんじゃないか?」。普段はなかなかじっくりと話すことができない2、3年生79人の本音が、下山主将の心に響いた。「気負っていたけど、あれからは楽しめるようになった」
最後の夏の決勝。最後の打者の三振を確かめると、2年前は見るだけだったマウンドに駆け寄った。「強い相手に必死で戦って勝った。これが目指したエンジョイ・ベースボールです」。グラウンドでは、下山主将の汗と涙と笑顔が、輝いた。(鈴木孝英)