欧州連合(EU)の非公式首脳会議が19日、オーストリアのザルツブルクで始まった。英国のEU離脱について協議するが、メイ英首相と各国首脳との隔たりは、なお大きい。来年3月末の離脱を前に、交渉の期限とされた10月の合意は見送り、11月に臨時の首脳会議を開いて決着をめざすことになりそうだ。
「いい結論を得ようとするなら、EUも立場を発展させる必要がある」。19日、会場に着いたメイ首相は報道陣にこう語った。
離脱の条件を定める交渉の最大の障壁は、英領北アイルランドと、陸続きのEU加盟国であるアイルランドとの国境をどう管理するかという問題だ。英国とEUは、離脱後も厳しい国境管理を設けないことでは一致しているが、具体策では対立している。
EUは、北アイルランドだけを、EU域内での貿易に関税がかからない「関税同盟」に残すことを提案。これでは、関税同盟から抜ける残りの英国と北アイルランドとの間に事実上の国境線ができることになり、英側は強く反発している。
英メディアによると、メイ首相は19日の夕食会でも、EUの提案を「英国を分断するもの」で「説得力はない」と批判。出席者の一人は「(交渉は)行き詰まっており、進展はなかった」と語った。
交渉が難航するにつれ、何の合意もないまま離脱の日を迎える「合意なし離脱」への懸念が高まっている。現実となれば、英国だけでなくEU側も経済や市民生活が大混乱すると予想される。これを避けるため、EU首脳会議のトゥスク常任議長は、11月にも臨時の首脳会議を開いて合意の道を探ることを、20日の会合で提案し、英国を除く27カ国の首脳と協議する予定だ。(ザルツブルク=下司佳代子)