朝鮮半島出身の渡来人の影響を受けたとされる「大壁(おおかべ)」と呼ばれる建物跡とみられる遺構が、奈良県高取町の市尾カンデ遺跡でみつかった。町教育委員会が27日発表した。4世紀末に建てられた国内最古級の可能性があり、専門家は渡来人の定住時期を考える上での貴重な発見とみている。
町教委は7~11月、介護施設の建設計画に伴い、約1千平方メートルを調査。古墳時代の大壁建物跡16棟と掘立柱(ほったてばしら)建物跡8棟が出土した。
大壁建物は朝鮮半島にルーツがあるとされ、溝の中に多数の柱を据え、その柱を包み込むように土などを塗って壁面を造る構造に特徴がある。国内では5世紀中ごろ以降、多数の渡来人が定住したとされる奈良や滋賀などでみつかっている。市尾カンデ遺跡の一帯は渡来系集団「東漢氏(やまとのあやうじ)」の拠点とされ、これまでも高取町内では5世紀後半~8世紀末の約40棟の大壁建物跡が確認されている。
出土した大壁建物跡の1棟は東西約14・5メートル、南北約13メートルで、国内最大級の規模とみられる。4世紀後半~5世紀初めの土器片が出土したことから、町教委はこの大壁建物が4世紀末~5世紀初めに築かれ、渡来人の同町への移住時期が100年近くさかのぼる可能性が出てきたとみている。
猪熊兼勝・京都橘大学名誉教授(考古学)は「渡来人が祖国で開発された最新のモデルハウスを建てたことがわかった。韓国でも大壁建物の調査例が増え、日韓の共同研究が進むきっかけになるだろう」と話す。
現場はすでに埋め戻され、現地説明会はない。(田中祐也)