欧州連合(EU)側と合意した離脱協定案を受け入れるかどうか、4日から英国議会の議論が始まる。与野党ともに反発が強く、承認に必要な過半数を確保できるめどは立っていない。否決されれば、市民生活に大きな混乱をもたらすおそれがある。採決は11日に迫る。(ロンドン=寺西和男、ブリュッセル=津阪直樹)
英のEU離脱、無秩序なら「リーマン以上の景気後退も」
「スムーズで秩序だった離脱を確かにするものだ」。英国のメイ首相は11月26日、離脱協定案について英議会で理解を求めた。
協定案の柱の一つが、経済活動の激変を避けるため、2019年3月末~20年12月末に設けた「移行期間」だ。EUとの関係が原則、維持されるため、この間に離脱の準備を進めようとしている企業は多い。
英中部バーミンガム近郊のプラスチック部品製造会社「グッドフィッシュ・グループ」のグレゴリー・マクドナルド社長(56)も、その一人。部品は英工場からEU域内の東欧各国に輸出してきた。英国がEUにいる間は関税がかからず、手続きも簡単だった。
だが、離脱後の関係次第では関税がかかるかもしれない。このため、移行期間が終わる20年末までにスロバキアにEU向け拠点の新工場を開くつもりだ。マクドナルド社長は「移行期間は絶対に必要」と話す。
激変緩和のためメイ氏とEU側が腐心した離脱協定案は、英経済界から支持されている。だが、EUに批判的な強硬離脱派の英与党・保守党の議員らは、EUルールの一方的な受け入れに強い不満を示す。念願の「主権の回復」には程遠い状況が続くからだ。
移行期間で英・EUは新たな自由貿易協定の交渉をするが、1年9カ月の交渉期間は短い。このため協定案は移行期間を最大2年間延ばすことを盛り込んだ。この間、本格的な移民の受け入れ制限もできない。
■過半数に大きく…