英国の欧州連合(EU)からの離脱条件を定めた協定案などをめぐり、メイ首相は10日、英議会の承認を問う11日の採決を延期する方針を示した。英国とEUが11月に合意した協定案には英国内の反発が強く、大差で否決されるのは不可避との見方が広がっている。
メイ氏は10日の英議会で「議論を聞いてきたが、(予定通り11日に)採決しても否決される見通しなので延期する」と述べた。メイ氏はEUと再交渉して合意の修正を試みたうえで、議会の承認をめざすとみられる。ただし、EU側は現在の合意が「唯一の選択肢」としており、再交渉に応じるかは不透明だ。
一方、EUの最高裁にあたるEU司法裁判所は10日、英国はEU離脱を一方的に撤回できるとの裁定を下した。英国には国民投票を再実施してEU残留を模索する動きもあり、今回の裁定を「追い風」にこの動きが強まる可能性がある。ただし、メイ氏は国民投票の再実施には否定的だ。
英国は来年3月末にEUから離脱する。協定案は、英国が将来にわたりEUルールに縛られる可能性を残す内容で、英国では強硬離脱派を中心に反発が強い。英議会が承認しなければ、合意なしの「無秩序離脱」に陥り、英国とEU諸国の双方で市民生活や経済活動に混乱が生じるおそれがある。(ロンドン=下司佳代子、ブリュッセル=津阪直樹)